イチオシレビュー一覧

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作品の奥行きの正体は、つまるところ『情熱』の唯一語なり

  • 投稿者: 友理 潤   [2017年 10月 23日 23時 48分]
傑作と呼ばれる文学作品において、共通している点を挙げよと問われれば、私は『奥行き』と答えるだろう。

文章の体裁や表現などは、言わば上面であり、日々研鑽していれば必ず身につくものだ。

しかし上面より踏み込んだ部分で見せる景色は、いかに綺麗に言葉を飾ったところで、読み手の心を動かすに至らない。

なぜならそこに存在するのは、作品の本質そのものだからだ。
それを私は『奥行き』と表現する。

本作はその奥行きが非常に深く、そして美しい。
それを実現させたのは、膨大な棋譜。
なんと当時の棋譜を元に、一手一手に想いを馳せ、登場人物の心の機微を表現しているのだ。

まさに脱帽の一言。

作者をここまで駆り立てているものは何か。

その答えは至極単純なもので、『情熱』の一語なのではないか。

燃え盛る情熱が生み出した奥行き…

その景色を是非見て欲しい。
心に必ずや届くものがあるはずである。


将棋の異端児に幸あれ!

将棋は語るに非ず指すものだと語るものもいる。
将棋は古くは戦の策を練るのに用いられた。
そんな将棋の世界に新たな新風を巻き起こす この作品。
内容は確りとした将棋ストーリーでありながら箸休めのように、隠された少しの笑いを交えたストーリーは、将棋を知らない人から知ってる方まで楽しめる事、間違いなしです。

更に読めば読むほど将棋を知り更に将棋をうってみたくなる話の書き方はまさに将棋のルールブックと言えます。

新たな詫び錆びの世界を垣間見える、なろうの新風であり、将棋の異端児に触れてみたくなってきた方もいらっしゃるのではないでしょうか?最初の難しい話の流れは言わば寿司のワサビのような物です、味わえば風味が広がり直ぐに辛味は旨味にかわる。

貴方も味わってください。
将棋と言う最高の逸品、作者様の将棋への思いがつまった作品を此処に紹介出来たことを嬉しく思います。

幕末の将棋指し 棋聖天野宗歩

幕末に現れた強すぎる将棋指し天野宗歩。

将棋三家の出でないという理由で『名人』になれなかった不遇の天才棋士。

その強さゆえに対戦は常に駒落ち(ハンデ)で行われるほどの強さ。
しかし、どれ程強かろうと名人にはなれない。

失意の中で宗歩は将棋の強さ以外の道を見つける。

それは市中に将棋を広めるという大事業!

そしてそれを認めない将棋三家。


史実に準じた今作品は宗歩の生きざまと将棋の勝負以外にも読み所が沢山有ります。

宗歩を取り巻く天野門下の弟子達との生活。

宗歩のライバルである将棋三家の抱える問題。

幕末に向かう不安定な時代にこの天才棋士はどのような道を歩くのか?

強すぎた棋聖天野宗歩の人生をご覧あれ。
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