イチオシレビュー一覧

人は自分にとって大切なものを失った時、簡単には立ち直れない生き物だ。

竜騎士の主人公は相棒の騎竜と部下を一度に失くしてしまう。
繰り返される後悔と自責。立ち止まったままの主人公に選択肢が再び迫られる。
思い悩む彼に差し伸べられたのは決して、優しいだけの言葉ではない。
言葉と翼が止まっていた彼の背中を押すための大きな一歩となるのだ。

主人公だけではない。彼の周りにいる者はそれぞれが「何か」を抱えて生きている。
自分の在り方。存在証明。揺るがぬ意思。そして誰しもが持っている弱い心。一人一人がもがき苦しみ、立ち止まっては振り返り、再び進んでいく。
だが、そこにあるのは全てが嘆きだけではないのだ。

後悔と自責の涙の向こう側に見えるものとは。
そして、問われる。竜と人との在り方とは――。

言葉と行動、感情の全てが読んでいる側へと訴えかけてくる。心を強く揺さぶるこの物語をどうぞ、ご堪能あれ。

≪後悔に生きる主人公≫
栄光の竜騎士、落とされた翼。主人公の栄光と挫折から始まる物語は、突然読者を混乱の戦場に容赦なく放り込むだろう。荒々しい描写で進行する戦闘場面は飛竜の赤い血を思わせる空の色で読者の心に楔を打ち込む。

≪在りし日の愛する友よ≫
立ち直れない程の挫折と自責から逃避する日々は、真心をこめて差し伸べる手すら邪険に跳ね除ける。チラつくのは亡くした友の金色の瞳。

≪逃れられない運命に≫
そうなるべくして、そうなった。取り返せない喪失は、二度目の後悔を許さない！　新な友の手を取れ竜騎士！　復活の空で贖罪への道標と対峙せよ！

≪爽やかに未来を目指せ≫
過去を受け入れ友に別れを。一歩踏み出す竜騎士の傍らには力強い友が立っている。
その立ち姿を思い浮かべて画面から目を上げると「なんで涙ぐんでるんだろう」咄嗟にハンカチで鼻をかみ、後処理の面倒さに後悔するのは私の個人的な問題だった。

　竜、竜よ。
　竜騎士とは飛竜とともに生き、飛竜とともに死ぬ王直属の精鋭たちである。
　その武勇、風を裂き、雲に乗り、天を往く。

　主人公は、とある事件で竜に乗れなくなり、竜騎士を辞めた。その後、恩師の引き立てで竜騎士育成学校の教師に転職。心に傷を負った主人公が、謎の食いしん坊少女や、ツンツン女竜騎士候補生と交流しながら立ち直っていく……かどうかはこの先の展開のお楽しみです。

　若干誤字や文章に甘さが見られますが、それでも十分に話は面白いので、見る価値はあるでしょう。