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絢爛豪華なる語り手の手腕

  • 投稿者: 九藤 朋   [2017年 10月 29日 10時 58分]
まずこの作品を読んだ、(いや、詠んだ、が適当だろうか)人たちは、豪奢な言葉の羅列に心地よい目眩を覚えるだろう。それは飲酒の酩酊にも似た心地よさだ。

目を閉じれば見えてくる。

白魚の指先、漆黒の髪、精緻な刺繍の施された衣装。

花魁が、花魁たるに至るまでには血の滲むような努力があったと思われる。

そこを著者はさらりと迂回して、ただただ艶麗な描写に徹するのだ。

リズムの良さもまた、この作品の要とも言うべきものであろう。中には著者が作ったと思しき造語のようなものも見えるのだが、それがまた見事に当てはまるのだ。

そして最後の「骸(むくろ)抱(いだ)いて 通夜語り」の締めにほう、と何とも言えない溜息を吐く。

哀しみよりも作品の「美」に満足してしまう。
美しいものに触れた時の何よりの快感。
それを得られた幸福に私は感謝する。

絢爛豪華なる語り手の手腕と作品に敬意と謝意を籠めて。
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