イチオシレビュー一覧

日本人の中国と中国人に対する思いは、複雑である。さまざまな感情と意見があるだろう。大切なことは、まず中国について知ることである。

中国についての情報は、マスメディアを通してのものが圧倒的に多い。その中には、予め用意された結論ないし意見（偏見と言ってもいい）が透けて見える、論考やルポルタージュが少なくないのは残念である。

野鶴氏による、中国に関するエッセイの特徴は、バランス感覚であろう。歴史的経緯、中国に在住している人でなければ書けない見聞、公平に物事を見つめようとする志――そうした要素が、見事に文章化されている。

新聞や市販の雑誌に掲載されているコラムに比べても遜色のない良質の文章が、ネットを通して無料で読める。喜ばしいことである。

前作の「纏足（てんそく）」と併せて、お読みになることをお勧めしたい。