イチオシレビュー一覧

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縦書きで読むのをお勧めしたい、匂い立つ文章。

暗く深い川に閉ざされた常春の町。その裏通りには人ならざる者が住んでいるという。この物語の主人公は、裏通りに住んでいる。「花筏」と呼ばれる妖である。花筏の目線で語られる常春の町は、奇妙でありながらもどこか人間臭く、それでいて人の感覚とは多分にずれている。これが面白い。
また、これらの物語がすっと胸に入ってくるのは、一因に文章力の高さが挙げられるだろう。滑るように連なる文章はリズム良く、その上比喩などの表現は鮮やかだ。水面に降る桜の花びらが、香と雅を運んでくるような。まさに「匂い立つ文章」と言えるだろう。
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