イチオシレビュー一覧

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どうか泣かないでと思う心と、涙かれるまで泣いてほしいと思う心は、どちらも先に逝くものの本音である。

自分が死んだ後、人はどれくらい泣いてくれるだろうか。寂しい、辛いと嘆いてくれるだろうか。

そんなことをちらりと考えてしまうのは不謹慎かもしれないが、人に言えない本音であるに違いない。何かの折に、ちらりと想像したことは誰にだってきっとあるはずだ。亡くなった時にどれ程の人間が悲しみ、悼まれるかで故人の価値をはかることができるとも言えるのだから。

形見の品を大切に使ってもらえることは嬉しい。自分の大事にしていた物ならなおのことだ。けれど自分とともに全てを天に還してくれる愛しい人の判断もまた、涙が出るほど心に染み入るに違いない。

激情に駆られたかの人の行動は、きっと正常ではないのだろうけれど、これほどまでに愛されていたと知って喜ばない女性などいるだろうか。残してきた家族の幸せを祈りつつ、ただ一人の女として心に刻まれたいと思うことはきっと自然な感情なのだ。心の狭い私はそう信じている。

或る正気を失った男の心情

  • 投稿者: 退会済み   [2017年 11月 03日 23時 43分]
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孫に発した言葉を皮切りに、弔いは形を変えて遂行の道をいっそう突き進む。
それは狂愚や自暴自棄でもなく、鰥夫となった男にしか理解しえない唯一の手段なのだろう。

究極の愛を追求した短編。
おそらく、亡くなった妻も夫の取った行動を望んでいないのかもしれない。
正気を失った男――されど、彼は誰よりも冷静だった。

死者との交信はあり得ない

御都合主義の奇跡など起こらない……故の!
虚しさを帯びた美しさがここにある。

読む者を圧倒させる隠喩は必読です。
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