イチオシレビュー一覧

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長月二十日のお祝いにもらったのは、在りし紫陽花の季節に焦がれる長恨歌…

神官の家の男の子十夜くんから、十一歳の萩野が九月の誕生日にもらったのは、紫陽花の箱に入った土の鈴。それは長い時間の果てに、身分違いの想い人と離れ離れになった上古の女性、沙耶葉の想いが籠もった品でした。萩野へのかすかな声を頼りに、二人は沙耶葉の想いを叶えてあげます。二つの鈴を印に惹きあうかのような、王朝時代を偲ばせる哀憐の言葉が切なくも、美しいです。女性が男性を想う「吾が背」はその逞しい背を頼る女性のいじましさを偲ばせるようですし、「吾が妹」は、手弱女を慈しむ益荒男の風姿を思わせるようであります。
移り気な紫陽花の花言葉とは裏腹に、今でも添いたい人を求める、長き想いの鈴は十夜くんの萩野への想いを伝える、何よりのプレゼントではなかったでしょうか。

土鈴に残る想い、あなたには聞こえますか?

荻野は想いを寄せる少年十夜から土鈴をプレゼントされる。
十一才の女の子に贈るにはいささか古風な贈り物だ。

土鈴をもらった日から、荻野は不思議な声を聞くようになる。

荻野にしか聞こえない声はひとつの願いを口にする。

愛する人と共にありたい、土鈴に残る願いを叶えるため荻野と十夜は力をあわせる。

土鈴の願いが叶うのかどうかは、あなた自身の目で確かめてください。
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