イチオシレビュー一覧
▽レビューを書くその子は、学校のプールに行くといつも座っていた。
にこりとも笑わず、ただ自分の話を聞いて、隣で一緒の時間を過ごしてくれた。
とある、ひと夏の夕方。少年が微笑んでくれること、夏を楽しんでくれること──それだけをひたむきに願い続けた「私」の、儚くも優しい心の揺れ動きの物語です。
夏休みって不思議な期間でしたよね。いつも一緒に行動していたはずの仲間と、同じ街の中で離ればなれになる。
長い時間をかけて紡いできた穏やかな居場所を、夏休みは夏の暑さの中へ溶かしてしまう。
長い休みの中で居場所を求めて、どこかへふらっと出かけたくなる感覚、ありませんでしたか?
僕は、ありました。
そしてその感覚が、この物語の底を流れているように思ってしまう。
懐かしくてたまらないんです。
きみに笑ってほしかった。
でも、本当に笑いたかったのは──。
優しい語り口の一人称が紡ぐ物語の結末に、きっと、あなたは涙します。
にこりとも笑わず、ただ自分の話を聞いて、隣で一緒の時間を過ごしてくれた。
とある、ひと夏の夕方。少年が微笑んでくれること、夏を楽しんでくれること──それだけをひたむきに願い続けた「私」の、儚くも優しい心の揺れ動きの物語です。
夏休みって不思議な期間でしたよね。いつも一緒に行動していたはずの仲間と、同じ街の中で離ればなれになる。
長い時間をかけて紡いできた穏やかな居場所を、夏休みは夏の暑さの中へ溶かしてしまう。
長い休みの中で居場所を求めて、どこかへふらっと出かけたくなる感覚、ありませんでしたか?
僕は、ありました。
そしてその感覚が、この物語の底を流れているように思ってしまう。
懐かしくてたまらないんです。
きみに笑ってほしかった。
でも、本当に笑いたかったのは──。
優しい語り口の一人称が紡ぐ物語の結末に、きっと、あなたは涙します。
「だって、いつも悲しそうな顔してるじゃん」
『私』自身は笑っているように思っていても、それが無意識のうちに表れてしまうもうひとつの内面。
誰にも知られたくない二人だけのプールサイドの会話。
いつか終わりが来てしまうことも気づいている。でも、今だけは、小さな幸せな世界にいさせて欲しい。
いつか必ず会える。その約束がかなうのは「いつ」なのか?
でも、必ず会える。それを信じられる、だから泣かないで笑って言えた「ばいばい!」。
青春の悩みをかかえつつ、毎日を進まなければならないヒロインを支えてくれた『彼』は誰なのだろう。
出会いと別れ、それがまたひとつ彼女を成長させていく。最後の誰もいなくなった綺麗な夕暮れの情景が脳裏に浮んで残ります。
ひと夏の終わりに味わった、ちょっとほろ苦スイーツのような素敵なお話です。
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