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精霊に振り回される悲劇を描いています

 とても悲しくもどかしい物語です。

 主人公は精霊の力に溺れた兄を救いたいと願っています。しかし他者を巻き込むことを嫌うので読者としては腹立たしく思えるでしょう。

 正しい答えはあるのかともがき苦しみ、迷う姿は現代にも通じています。
 目的のために手段を択ばなければそれはそれで痛快かもしれませんげ、主人公は力が弱いです。
 だからこそ魔法は使えないけど、現代人と性質は似ていると思います。

 精霊は強大な力です。その力を手に入れて溺れない保証などどこにもありません。主人公の兄は悪ではなく、愛する人を失った心の弱い人間なのです。

  このこんがらがった物語がどう解決していくか、実際に読めばわかります。

それは、様々な情が渦巻く悲劇の円舞曲

  • 投稿者: 高柳神羅   [2018年 08月 20日 21時 41分]
 剣と魔法。精霊と魔王。作風としては王道のファンタジーなのですが、昨今流行りの主人公最強系とは全く正反対の物語です。ファンタジーと言えば魔法とか精霊とか『現実には存在しないもの』の方に目が行きがちになりますが、今作の最大の見所は『人物たちの間で遣り取りされる愛憎劇』という、現実社会でも普通に存在するテーマに基づいて描かれている場面の数々だと思います。
 敵だから憎む。味方だから守る。そんな単純なものではありません。苦悩に苦悩を重ねて足掻きながらも、それでも自分にとっての正義に向かって進んでいく登場人物たちの姿は、健気ながらも何処か悲しさすら感じます。
 主人公最強が流行っている現代だからこそ、逆に手に取って頂きたい、これはそんな作品です。
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