イチオシレビュー一覧

　皆さんは、必ず何処かで小諸川あさひを見ている。確信があるんです。

　どうして突然こんな事を言い出したのかなんて、コチラから言うべきなのかどうか…… とにかく彼女の事は私から説明するまでもないのです。強めの口調で言わせて貰います、あなたも小諸川あさひと何かしらのキッカケで接触しているからなんです。
　それは決して他人に勧められてとかではなく、人によっては自ら接触しているハズです。もしくは向こうから話しかけてきた場合もあるでしょう。
　しかし、それなのにあなた達は決定的な記憶を持っていない。何故なのか聞かれても、私にだって答えは言えない。私自身も記憶が定かではないからだ。

　小諸川あさひを、探しています。
　小諸川あさひを、探しています。
　小諸川あさひを、探しています。

小諸川あさひちゃんの救出にご協力ください。

複数の小学校に同時多発的に表れた少女です。
北は青森から、南は鹿児島まで。クラスメイトか同級生かプラスマイナス一年の先輩後輩です。
至って普通の地味な少女です。死んだこともある少女です。

あなたも知っているはずです。
あなたも会ったことがあるはずです。

だからあなたは小諸川あさひちゃんの情報を出せるのです。
お願いします。どうかご協力ください。
あなたが誰であろうと、小諸川あさひちゃんのことを知っているのですから。

　書籍化してほしいくらいに好きな作品。紙の本で、枕もとに置いておいて、冬の夜中に手をかじかませながら懐中電灯で読みたいです。

　ホラーとしての完成度はとても高いと思います。
　なんだかちぐはぐな感覚や、どうにもすわりが悪い、居心地の悪い感じが味わえます。
　書き込む部分と書き込まない部分とのバランスが絶妙。なんとなくロバート・ブロックやデュ・モーリアを読んでいるような、自分の認識が歪んでいるみたいな錯覚が起こります。錯覚ではないのかもしれません。

　ホラーが好きなら是非読んでください。後悔しません。