イチオシレビュー一覧

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異国の少女に花の名を与えて慈しんだ怜悧な青年将軍と、ひたむきにその背を追って成長していく少女の、八年間の軌跡

雪女王の支配する常冬の王国で、獄吏の男に銅貨一枚で買われた幼い奴隷の少女。彼女があるとき命じられたのは、俘虜となった敵国の若き将軍の監視役だった。言葉の通じぬふたりは、つたなくも互いにいたわりを分けあい、名無しの奴隷であった少女を異国の将軍は可憐な花の名で呼んだ。
閉ざされたかたい殻を破った少女の物語は、そうして奇跡のように幕を開ける。

青年将軍によって国に連れ帰られた幼い異邦人は、内気だけれど決して気弱ではなく、人一倍優しくて頑固な女の子。無垢で傷つきやすい少女を、時には不器用な嘘でもって包み込むように守り慈しむ青年の優しさと、その優しさを愛しながらも彼に追いつきたいと願ってしなやかに強く成長していく少女のひたむきな想いが、切なく心を震わせる。

決して美しいばかりでもやさしいばかりでもない世界、それでもそれを心から愛する少女のやわらかな眼差しを通して描き出される、愛しい日々の物語。

カサブランカの意味

  • 投稿者: Crown   [2020年 03月 04日 06時 43分]
カサブランカという花の花言葉にもあるように雄大な愛と純粋さが感じられる物語でした。
最初は言語がわからず不安なブランカですが、成長していきとても綺麗な愛を咲かせます。途中の将軍の優しい嘘に涙が止まりません。花を育てるための要素などもとても素敵な表現が使われていて、最近の恋愛もののなろうとは一線を画しています。
読んでみると暖かい心になります。
ぜひ他の過去作も堀ってみましょう。

白に色と熱を感じてみてわ

  • 投稿者: はなはな2   [2018年 10月 12日 02時 23分]
不遇な少女の人生は一人の軍人との出会いから動きはじめた。
波瀾万丈な人生が独特の白さを重ねていくように進んでいく。
まるで雪が静かに降り積もる景色を眺めるような心持ちにさせる美しさが魅力の文体です。
知らず涙が滲むのも仕方ないことなのです。


携帯小説サイト時代に更新を追っていた作者様の作品がまさかなろうに移籍されていたとは思いませんでした。
また読めるとは嬉しい喜びです。
ありがとうございました。

甘いのか辛いのかどっちやねん!!

背景が戦時中という殺伐とした世界観の中で、優しい純愛が絶妙なバランスで展開される。

捕虜(若き将軍)と奴隷の牢番(子供)が出会ったのはあまりに過酷な北国の収容所。しかし愛を知らずに育った「名無し」の子供は、言葉が通じないながらも優しく接してくれる捕虜に、じょじょに心を開いていき、一生懸命労り報いようとする。

しかしやがて、若き将軍は脱走し、残された子供は……。

自分の(汚れた)心が洗われるような優しい文体。凍てつく冬の描写が、登場人物の温かみを引き立てています。

あと、わたくし、漫画のキングダムが大好きで、番外編「空の玉座」がことのほか気に入っております。こちら、戦争描写はさらりと分かりやすく描かれています。苦手な人も大丈夫。

この番外編を読んでよけい、本編での世界観に深みが増し、人の優しさや、友情、愛情が強調されました。

素晴らしかったです。タダ読みしてごめんなさい。
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