イチオシレビュー一覧

　早乙女百合子は九十年の生涯を閉じようとしていた。生涯独身、仕事に人生を捧げたような彼女は、人生というものに一種の諦めを見いだしていた。甘酸っぱい恋物語は自分には存在しない。そのとき、突如としてやってきた「死神」。彼の奇妙な提案により、百合子は若返って残りの人生を過ごすことになる。

　百合子と死神ジーンの、どこか懐かしさを感じるロマンスが魅力的です。二人のやりとり、おばあちゃんだからと安易になびこうとしない百合子、王子様のようにエスコートするジーン。この二人だからこそ読み取れる奥ゆかしさや、恋愛模様のいじらしさ、心に広がっていく微笑ましさ。それを文章全体から感じ取れる、美しい小説です。

タイトルにあるように、自分の心はおそらく、恋愛感情が枯渇してしまい、どう恋愛小説を書けばいいのかともがき苦しんでいました。
そんな時に出会ったこの作品に、自分の心は潤いを与えられたのです。
それは、キャラだけでなく世界観や物語、細部に至るまで。
よってオススメせずにはいられませんでした。
さあ、激甘死神の脳天直下のセリフを一つ、召し上がれ。

「へえ、涙って結構甘いんだね。これは君が幸せ、って証かな？」

この言葉に射抜かれた者よ、いざ物語へダイブせよ！