イチオシレビュー一覧

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「だあれ?」極彩色の声が誰何する。(本文抜粋)

ひとこと。ただただ、美しい。

瑞麗な文章から想起される映像美。
言葉の選定に作者様の溢れる感性が冴え渡ります。

少年は引き込まれるような少女と出会います。その出会いは幻想的。まるでギリシア神話に登場するセイレーンの巣に迷い込んだようです。

水面にたゆとう少年と少女の情緒が、麗しく、どこか切なく、どこか熱を持ちながら綴られています。

小説家になろうで一番好きな短編です。

色を感じられる美しい世界

  • 投稿者: 退会済み   [2018年 06月 12日 22時 46分]
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人であるがゆえに生まれる色は、美しく艶やかに色付くばかりではないということでしょうか。甘い雨のシーンはまるで柔らかい世界へと引きずられていくよう感じられ、難無く物語へ浸ることができます。若さゆえの行動も、率直に描かれています。
純文学というものを初めて読ませていただきましたが、美しい世界へと誘ってくれる素敵な作品でした。

まるで古き時代の文豪が作り上げたような世界観。

  • 投稿者: 退会済み   [2018年 06月 10日 20時 55分]
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 twitterにて自薦を頂き拝読しました。
 明治から昭和の文豪を思わせるような、素晴らしく丹精な文章で綴られた小説で、読む側を作品世界に引き込む力のある作品です。
 美しい比喩と情景描写で綴られる物語に、夢心地を味合わせて頂きました。

 ただ惜しむらくは、展開に起伏が無い事でしょうか……。
 男女を描いた小説、そして尚且つ美麗な文体――という共通項で、私は本作を読みながら川端康成や谷崎潤一郎といった文豪を思い出しておりました。
 それらの作家であれば、展開にもう一ひねり、「オチ」と言える何かを付け加えた事かと思います。

 今作が「美しい恋愛小説」である事は確かですが、「美しく残酷な傑作」となるにはもうひと手間が足りなかった、そのような印象です。
 辛口のレビューとなってしまいましたが、「傑作を作りえる可能性を持った作者様」と考えたが故のレビューで御座います事を、ご了承下さい……!

幻想的な光景が浮かびあがる作品

  • 投稿者: 退会済み   [2018年 06月 09日 20時 31分]
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これは少年と少女の美しい話だ。
そしてその二人は二つの生き物に例えられる。片方は鯉であり、片方は伝説の生き物であるセイレーンである。
獰猛な鯉は水中に鳥を引きずり込み、またセイレーンは美しい歌声で人を惑わし水中に引きずり込むという。
少年と少女は惹かれ合うが、それはどちらから始めたものなのだろうか。
少年が少女を引きずり込んだのか。それとも少女が少年を惑わされたのだろうか。
なんとも幻想的な光景が浮かびあがる物語である。

花は散ってこそ、美しい思い出に変わる

  • 投稿者: 音叉茶   [2018年 06月 07日 13時 27分]
純文学というジャンルを敬遠してしまう人は多いだろう。
しかし、この短編はジャンルで避けてしまうのは勿体無い。
誰もが潜り抜ける思春期ゆえの脆く儚い、それでいて身勝手で消極的な想いを瑞々しい筆致で表現した傑作である。
大人と呼ぶには頼りなく、子供と呼ぶには考えすぎる男女二人の揺れ動く心情を、雨の匂い煙る視点で淡々と切り取った恋物語。
是非とも一読してみてください。

懐石料理の一品のような短編

  • 投稿者: minz   [2018年 06月 06日 18時 59分]
物語が脆く儚いものたちで紡ぎだされているのに加え、
たっぷりと湿度を保った、しかし繊細な描写。
それらが相まって、まるで懐石料理の中の一品を楽しんでいる気持ちにさせられます。
目で楽しんで、ゆっくりと口に含んで、飲み込むのが惜しくなる、そんな情緒ある短編です。
難しいのはちょっと苦手・・・という方でも、気軽にトライして美味しいところだけ味わえる作品ですので、ぜひ、懐石料理が苦手な方にも あ、いや、 純文学系が苦手と思っている方こそ、味わっていただきたいです。

魅惑の旋律に引き込まれる

  • 投稿者: 七瀬渚   [2018年 06月 04日 16時 37分]
この物語には舟人を惑わす『セイレーン』というワードが出てきます。彼らはいつ歌声を耳にして、いつから迷い込んだのか知らないまま戻れない方へと向かってしまう。

不思議な感覚です。ここにあるのは文字の並びであるはずなのに、まるで本当に歌声を聴いているかのような気分になります。誰が教えてくれた訳でもない、だけど何処か懐かしい歌声。この美麗な文字の並びの中に確かな旋律を感じるのです。

若さゆえの我儘な感情も素直にえがかれている。こういったある種の生々しさが、物語を美しいだけに留めず深みを与えています。

ほのかにファンタジーを感じさせる要素も魅力的。セイレーンの歌声に導かれ、夢見心地で揺蕩うひとときを是非お楽しみ下さい。

しっとりとした雰囲気が魅力的

  • 投稿者: 如月ゆう   [2018年 05月 28日 01時 54分]
描写がすごく綺麗で、じっくりと読ませてくるタイプの小説でした。
ライトノベルばかり読む方では少し退屈に感じてしまう恐れもありますが、夏目漱石や森鷗外のような作品が読める方にはお勧めできる短編だと思います。

キャラクターが中学生ということもあり、不安定で相反する気持ちをどうしても持ってしまうような多感な様子もしっかりと描けていると感じました。

また、鯉や猫、時折出てくる色の描写など、その全てに物語上の意味を感じ素敵な仕上がりになっており良かったです。

春、少年の心に芽吹くものは

春休みのある日、少年の耳が捉えたのは美しい旋律でした。
その音に誘われるようにして、迷い込んだのは隣家のお屋敷。
色彩豊かな鯉の泳ぐ池、その縁に佇んでいたのは――

セイレーン。

そう見紛うばかりの少女でした。
最近引っ越して間もないという彼女と、彼は少しずつ話を交わしていきます。
二人っきりの満ち足りた時間。
少年の心には、次第に甘い砂糖菓子のような感情が芽吹いていました。

しかし、そんな瞬間も長く続きません。
やがて始まった学校は二人だけの関係を少しずつ壊していきます。
次第に距離が離れていく二人ですが……。

さて、そんな二人の結末は本編で。

色彩、心情、いずれも秀逸な描写で、きっとうっとりとした時間を過ごして頂けると思います。
美しい世界に浸りたい方、宜しければ是非ご一読下さい。
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