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『請われれば厭わない』神の教えが引き起こす愛憎、そこにある救いとは

  • 投稿者: tomo   [2023年 02月 12日 11時 56分]
 『蒼き月夜に来たる』の登場人物、テル・ルーメン主教。美貌と『心眼』を持ち、その立場と美しさに愛憎の目を向けられ心を閉ざす彼の絶望と、そこから少しだけ掬い上げられるまでの物語です。

 スピンオフとはいえこのお話で独立しているので、先に読んでも問題ありません。むしろ読んで!
 謎に満ちているルーメンの過酷な人生は本編ではあまり語られませんが、彼の背景を先に知っていれば本編はまた別の楽しみ方ができるはず。

 友人フォルティスがまっすぐに向ける親愛。気付かせない程の、だけど父親のように深い愛情で見守るフェエル。
 ルーメンを心から愛し支え続けてくれる人々と関わり救われていく姿に安堵を覚えながらも、様々な愛憎が絡み起きてしまう壮絶な事件には何度読んでも涙がこぼれます。ここまで感情が揺すぶられる作品にはなかなか出会えません。
 多くの方にこの気持ちを感じていただきたい。素晴らしい作品です。

異能持つ美しい青年が出会う、さまざまなかたちの愛。

  • 投稿者: 退会済み   [2022年 07月 05日 09時 24分]
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異世界から落ちてきた「ユエ」を巡る『蒼き月夜に来たる』に登場した、神官テル・ルーメンの過去を明らかにする物語です。

スピンオフなのですが、とにかくまずはこちらをぜひ読んでみていただきたい!

「神眼」を持つ神の子として、幼い頃から玩具代わりに教典を学び、どんなことも——自身の体を傷つけるようなことさえも——「請われれば厭わず受け入れる」。

彼視点で物語が進むので淡々と語られるのですが、その状況を改めて思えばもうなんともやりきれず切ない。

やがてフォルティスという青年と出会い、初めての救いを得て、少しずつ変わっていく彼に、それでも安寧を許さないとばかりに襲いかかる苛酷な事件。

決してライトではないのですが、文庫本一冊ほどの長さで、読んだ後にぐらぐら心が揺れ、すごいものを読んでしまったと泣きながら深く息を吐いてしまいました。

とにかく読んでっ!そしてこのシリーズにハマってください!

蒼い月は冷たくなく照らすのだ

 ある日ふらりと現れた子供は、教会の総主教に見出だされ、元より持っていたその物事を見通す力を増していく。だが、どこか達観した彼は、権謀中枢の激しい渦に翻弄されていくこととなる。



 ここは自分の居場所ではないと、誰もが一度は思い悩むのではないだろうか。そうして、過去のルーツ、生き方。育ての親……そんな沢山を感じながら、人は進む。

 暗き夜道だと思っても、きっと月夜は照る(テル)。



 スピンオフであり、外伝にあたるお話ですが、こちら単体でも一貫して素晴らしい物語。一人の少年が、少しずつ何かを気付いていくというのは、王道かつ心に響くもの。

 こちらから読んで本編に至り、またこちらを読めば発見もあるかもしれない。そうやって広がっていく物語。
 それは、とても素敵なものではないでしょうか。
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