イチオシレビュー一覧

　一つ一つの言葉の表現や運びが芸術的で素晴らしい純文学小説です。

　しかしこの作品の真骨頂はまた別にあります。淡々と語られる文章に引き込まれるように読んでいると一瞬にしてはっとさせられるような表現。

　夢中で本を読んでいたら、ふと後ろから声をかけられたかのような、そんな不思議な感覚。

　是非とも御自身で読んで、その感覚の正体を確かめてみてください。

純文学は難しい。そんな風に思いがちの人に読んでほしい短編。時間にして３分ほどの純文学体験がここにあります。

純文学とは何か、という命題は常にありますが
私の定義は「読んだときの自分を楽しむ文学」です。

この短編読んだ時、私は主人公に同化して最後のセリフに、はっとさせられました。
なんてことないちょっとした仕掛けに見事にはめられてしまった。
ちょっとつまずいたくらいの衝撃。

ただこのつまずきが作者の狙いだとしたら？

遠くから読者つまずく様子眺めている作者を思うと（被害妄想）、まんまとつまずいた自分が自分で笑えてきます。
恥ずかしくなって、別の誰かに一緒につまずいてもらおうと、こうしてレビューを書いているわけで。

タイトルの「捕らわれの。」って一体だれのことなんでしょうね。

ところで皆さん、歩きスマホは危険ですよ。
油断してるとつますきますよ、純文学に。