イチオシレビュー一覧

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あまりにも儚く、虚しく、そして、とても優しい…… 小さな小さな二人だけの世界。あなたも堪能してみませんか?

  • 投稿者: 水渕成分   [2020年 11月 12日 05時 32分]
なななんさま主宰の「夏の涼」企画及び銘尾 友朗さま主宰の『夏の光企画』参加作品だそうです。

4千字余りの空想科学(SF)。しっとりとした文章がとても読みやすいです。

物語は三人称視点で展開します。登場人物はヒロインのパンドラとそれを献身的に支えるノア。この二人だけです。

無邪気に笑うパンドラ。その小さな望みに応え続けるノア。

やがて、あることが起こり、この世界の真相が明らかになります。

あまりにも儚く、虚しく、そして、とても優しい……
小さな小さな二人だけの世界。あなたも堪能してみませんか?

偽物の世界で紡がれる嘘偽りない愛おしさ

  • 投稿者: 退会済み   [2019年 03月 24日 16時 17分]
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どこにでもある我々が思い浮かべやすい海と砂浜、あたたかな日差し、そんな場所を楽しむパンドラとそれを暖かく見守るノア……どこにでもある優しい、穏やかな……そんな




嘘偽りだらけの狂いきった世界……




ホンモノの世界はどうしようもなく終わっていて、現実は暖かさなど抱かせない、そんな現実から逃避し続けるたった2人だけの狂った輪のような世界……

最後の人間パンドラを守護する人工知能のノア、ノアはこんな歪んだ真実をパンドラに突き付けることを良しとせず、優しい嘘の中で彼女をはぐくむ。

それは自身の存在意義故か?

パンドラという異種族に対しての真摯な思いからか?

辛い現実か、優しい虚構か、どちらがパンドラにとっての救いなのか、それは読者によってよりけりだろう。
だけど、一つだけ言えるのは、ニセモノだらけの世界において、それでもそこで育まれた【思い】は嘘偽りの無い真実なのだと私は思う。

2人だけのセカイ、ひとつだけのシンジツ。

 夏空の下、穏やかなひと時を過ごすパンドラ。そんな彼女に寄り添う青年、ノア。彼らは誰にも邪魔されることのない、2人だけの「セカイ」に生きていた。
 それは、甘い夢のような空間。不変の安寧。約束された平穏。
 だが、ノアだけは知っていた。このセカイに隠された「シンジツ」を。よく出来た「ニセモノ」の、裏側に潜む「シンジツ」を――。

 遥彼方先生が送る、淑やかで儚いSF作品です。「偽物」の中から生まれた真実と愛の物語、ぜひご一読ください。

ニセモノに一つの本物を混ぜて

  • 投稿者: カサノリ   [2018年 08月 27日 20時 55分 ()]
この物語は正真正銘、二人だけの物語だ。他に混じるものはない、二人のニセモノの物語。

けれど、そのニセモノの在り方に心地よさを感じるのはなんでだろうか。二人が互いに向けるココロが純粋だからだろうか。それとも、筆者の描写が巧みだからだろうか。
答えは読む人それぞれに存在するだろう。

ただ、私が特筆したいのは、この物語の中に添えられた、ホンモノの存在についてだ。あるいは物語を読んだ人は、彼のココロの存在について悩むかもしれない。

けれど、あのホンモノこそ、それを証明するものだと思えるのだ。ニセモノで事足りるものに、必要以上の手間をかける。その行為こそ心配りであり、愛情と呼ぶのだから。

多くのレビューが書かれている通り、すっきりと読めて、読後に残るものがあります。自信をもってお勧めしたい良作です。

ニセモノじゃあ駄目なのか

  • 投稿者: LE-389   [2018年 08月 25日 22時 14分]
この作品には、『ニセモノ』が出てくる。

タイトルの通り、感覚を強く刺激するように描かれる『夏』がそうだ。
どんなに『ホンモノ』らしく感じられても、『ホンモノ』そっくりに作られた『ニセモノ』であることに変わりはない。

『夏』と同じく、ホンモノらしく作られて、ホンモノであるかのように描かれたもうひとつのもの。
それは『愛』だ。

わたしは、この『夏』がニセモノならば、この『愛』もニセモノだと思う。
「だから価値が無い」とは思わないが、ニセモノかどうかというのはまた別の問題だ。

ホンモノだと思う人、ニセモノだと思う人、そのどちらにも「あなたの中の何が、そうさせるのか」とわたしは聞きたい。

そしてもうひとつ。

この結末は、バッドエンドだろうか。
わたしはそう思わない。ニセモノの『愛』は、価値のある結果をもたらした。

あなたは、どう思う?

切なすぎる。 優しい嘘のその先は……。

  • 投稿者: 藤乃 澄乃   [2018年 08月 25日 20時 35分]
【近未来、人類が越えてしまった一線のその先】

全てはまぼろしか……いや幻影の中に確かにあった。
全てが虚構のよう……いや真実の愛が確かにあった。

……はずだ。



生まれたときからずっと一緒だった。

「ノア大好き」
「私も大好きですよ」

リゾートチェアに寝そべるパンドラ。

白い砂浜に青い海。
青空に白い入道雲。
照りつける日差し。

大好きなノアにかき氷を食べさせてもらう。

一見どこにでもある光景。
でも、どこにもない真実。

いや確かにある現実。


『大好きよ、ノア』


ラスト2行、私は涙した。

……あなたは?

ニセモノの器、本物の愛。

  • 投稿者: gaction9969   [2018年 08月 23日 19時 56分]
 のっけから、甘ぁぁぁぁぁぁいっ!! と叫び出したくなるところですが、それが早計であることを貴方は思い知らされるでしょう……

 「匣」の中のパンドラが束の間見た、真夏の情景、それは、

 自らの庇護者である「箱舟」ノアの、腕の中で見た夢に過ぎないのか。

 氷菓が繋ぐ、現実と虚構。

 例え全てがニセモノであっても、そこにあった確かな真実。

 最初で最後の真夏の恋に、貴方はきっと涙する。

 

”ニセモノ”の中の”ホンモノ”に涙

白い砂浜青い海。リゾートチェアに寝そべるパンドラは、大好きなノアにかき氷を食べさせてもらう。

無邪気なパンドラと、その世話を焼くノア。
中盤の幸せそうな二人が、何よりのエンドへのスパイスです。

全て嘘だと思っているパンドラ。
しかしその中には本物が混ざっている。

最後に読者に知らされる事実とは?
近未来を舞台に、私たちにありえるかもしれない未来が提示される短編です。

二人の切ない想いに涙。
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