イチオシレビュー一覧

▽レビューを書く

冒頭で諦めないで!(※歴史好き向け

 最序盤では、「これは渋いオリジナルの剣豪ものか?」と、かなりの敷居の高さを感じてしまうものの、すぐにそういう取っ付きにくさはなくなります。
 五話くらい読んでいくと、大概の人は解消されるんじゃないかと思います。特に歴史好きの人は高確率で。
 なので、そこまで脱落せずに読んで欲しいですね、是非。

 好みが合う人にはトコトン合いそうな作品です。
 でも、その面白さ、どこが面白いか書いてしまうとネタバレになってしまうため書けない、というレビュアー泣かせの逸品ですw

 ちょっと勧め方が難しい……
 ただ「幕末」と言って、それで万人が想像するイメージ(講談的ヒロイズム)とは、ひと味もふた味も違う、
 ところが、確かに舞台は「幕末」なのです、間違いなく。

生活音、環境音、衣擦れ音、虫の音色、月の灯り、酒の匂いに男の臭い。『読ませかた』が抜群に巧いのだと感じる作品

五十両。誰かにとっては命を懸けるには安く、彼にとっては十分すぎる報酬。

弱味につけこまれ、極道一家の食い物にされる誰かにとっては恐ろしい奴も、彼にとっては……

その姿、汚く髷(まげ)も結わず、無精髭。

≪「本業の力が分かったかい? 親分さんよ、悪いけど、ちいっと痛い思いをするぜ」≫


おう! かっこいいぞ! 朽葉! 

空っ風が吹きすさんで砂埃が舞い上がるような情景が頭の中に浮かぶ浮かぶ。
生活音、環境音、衣擦れ音、虫の音色、月の灯り、酒の匂いに男の臭い。

どれも詳細な描写がある訳ではないのに不思議と補完される。

テンポが良いだけではなく『読ませかた』が抜群に巧いのだと感じる作品。

私は『歴史』ジャンルを侮っていたのかもしれません。こんな世界があっただなんて。
↑ページトップへ