イチオシレビュー一覧

　高い先見性を持ち、奇抜で型破りという織田信長の人物像は多くの人を魅了し、広く認知され「信長」という名前を出せばもはや説明すら不要な存在となっている。

　しかし、一般的に広まっている信長像の中には後世の創作物による引用や上書き上塗りを経て誤解されて伝わっていることも多い。

　筆者は当時やりとりされた書状、各地に残された逸話、発掘調査などの資料を元に信長の足跡を辿り、信長の性格・思考方法・行動様式を考察し"本当の信長"に迫っていく。

　信長の「何故？」に着眼した良作。

もし仮に貴方が今、織田信長に関する作品を書いているならば、これを読む事をお薦めしない。
織田信長という人物のイメージそのものが、致命的に変わってしまう可能性がある。

筆者は、信長公記等を基にした所謂通説のバイアスを廃し、手紙等残存する一次資料、土木工学的にアプローチした発掘結果、各地にやがて埋もれ消え行く民間伝承等、ほとんど一般に知られる事の無かった情報を基に、織田信長という人物の行動様式や組織形成、政策等の再構築を試みる。

そして現れたのは時代背景も何もかも無視した様な思考する異物。
そこいらの転生主人公達が裸足で逃げ出す程の異質さだ。

繰り返す。
もし仮に貴方が今、織田信長に関する作品を書いているならば、これを読む事をお薦めしない。


筆者は忘備録などと謙遜されていますが、第一級に面白い読み物です。
歴史に興味のある方は是非。