イチオシレビュー一覧

己を貫き通し、死ぬとわかっていながら、刀一本で鉄砲隊に立ち向かって行くような、正に"漢"な主人公。
ゴリゴリの佐賀弁を喋り、曲がったことが許せない、忠義者の快男児。
今日も許せぬ悪を斬り、困っている人を助け町を行く。

しかし！
そのサムライ主人公は！
10才の銀髪美少女なのである！

一番ヶ瀬央一郎は、戦いに敗れ、気がつくと貴族の家の娘ヴィオレーヌに生まれ変わっていた！
貴族令嬢として育てられるヴィオレーヌだったが、前世の央一郎の自我がそのままな為、その精神は正真正銘の九州男児。
女になっても生き方を変えられず、女性の華奢な体に戸惑いながら、それでも剣の道をゆく！

九州男児貴族令嬢という、焼肉とショートケーキを同時に食べたような不思議な主人公、一見食い合わせが良くないように思えますが、読んでいく内にいつの間にか、不思議な味の虜になっていました。

ぜひご賞味あれ！

主人公はタイトル通りの奇抜なキャラ付けですが、内容は王道中の王道。もちろん良い意味で。
第一章なんか、主人公がTS転生侍幼女でなければド直球のボーイミーツガールです。

武士道に従って行動したりえげつない戦法で周囲に引かれることもありますが、主人公は好漢です。幼女なのに。
刺客に狙われる少女には迷わず助太刀しますし、一本筋の通った人物が大好き。
味方はもちろん、たとえ非道な敵であってもその実力や鍛練ぶり、忠義心などに関しては称賛を惜しみません。

脇役達もなかなか良いキャラしていて、主人公を過度に持ち上げたり贔屓するわけではなく（全くゼロではありませんが）
あくまで自分達の職務や信念や倫理観、あるいは利害に基づいて事件解決のために主人公に助力するという爽やかぶり。

明治維新後に最後の侍として散っていった男が、もう一つの太平の世で観光しながら悪を斬る異世界時代小説。
おすすめです。

西南戦争と共に果てた旧時代の残り香の様な男は、見覚えの無い世界の可愛らしい令嬢として新しい生を受けた。
世界が、環境が、姿かたちまで換わっても不義を許さず劔を振るう侍の在り方は変わらない。例え、他者の眼には異端の存在に映ったとしても。
そんな侍幼女の異世界世直し（？）譚。

本作のアイデンティティの多くは、主人公の「TS転生土佐弁侍銀髪幼女」というてんこもりの強烈属性群に詰まっているといっても過言ではない。
それらを支えるのが、戦闘描写と頭のネジの締め具合に『若干の』問題があるキャラ描写に定評のある作者の筆力である。
当然ながら、主人公の方言はきちんとルビで翻訳されているのでご安心を。

ちなみに、主人公はTSキャラとしては「受け入れ＆無自覚行動系」に分類できる。
要するに水被って女体化する例の作品とよく似た路線だが、TS娘の新鮮なリアクションを重視する人にはあまり刺さらないかもしれない。

幼女でも、侍の魂を持っている。独特な価値観と信念を持って人を殺める。
物語はシリアスでありながらも緩急あり、ライト層にも楽しめるものだ。
物語の中で起きることがすぐに繋がらないことがあり、忘れた頃に回収される伏線に、もう一度全話を見直したりもする。

この作品は考えながら読むと、奥があって何倍も面白くなる。

　物語は既に巨星・西郷隆盛の墜ちた西南戦争より始まる。
　主人公・一番ヶ瀬央一郎は、最期の時を悟り銃弾飛び交う戦場へと、刀を構えて突撃す。
　切って切って彼は余多の銃弾でその生を絶たれた……。

　この時点で既に格好いいんですよ、このお方。
　どう格好いいかは本文を読んでください。
　読んでもらうために、こっちとらレビュー書いてるんだから。

　兎も角、一番ヶ瀬央一郎様はですね。
　一度生を終えたと思ったら、二度目の生にてお目覚めになるのです。
　幼女だけど。
　中身は九州男児な令嬢・ヴィオレーヌ様としてだけど。

　物語の序盤から塩漬け生首とか血生臭いけど、それだってきちんとした理由があって。
　一本筋の通った背中は乙女じゃなくて漢女(おとめ)です。

　たおやかな姿に硬骨漢の魂を宿すヴィー様の勇姿に刮目せよ！