イチオシレビュー一覧

　机の引き出しの奥で見つけた、奇妙なモノ。そこには『お父さんお呼び出し券』との文言が書かれていた。
　不思議に思いながらも、朝の慌ただしさのせいで、カバンのポケットに突っ込んだままで、放置してしまった物語の主人公。
　早くに他界してしまったお父さんの記憶すら残っていない主人公は、朝の出がけに、唯一の家族の母親と喧嘩をしてしまう。重たい感情を引きずったまま、何をする気力も湧かずに、その奇妙な文言を見つめていると、目の前に現れたのは……？

　このお父さんが、残してしまったふたりのことをとてもたいせつに思っていることが、痛いほど伝わってくる。
　優しい笑顔だったり、なかなか認められなくてしょんぼりしたり、悪戦苦闘するその姿からも、愛情が溢れてくるようで……。

　せつなくて、もどかしい……けれど、こころは暖かくなる。
　読んだ人も優しくなれる、優しい優しい物語。新しい年の初めに如何だろう……。