イチオシレビュー一覧

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残酷だけど希望のある童話の世界へようこそ

  • 投稿者: 墨崎游弥   [2019年 04月 15日 14時 37分]
この作品は童話のモチーフが含まれています。ですが童話というにはあまりにも残酷で美しいです。

内容は童話研究会という同好会の活動を描いたもの。ジャンルとしては学園ファンタジー系です。
その学園ファンタジーの中に大筋となるストーリー、個人の過去や能力に関するストーリーが絡み合ってこの作品は形作られているようです。
さらに、随所で繰り広げられる人間ドラマ。これも主人公たちの性格と過去があったからこそでしょう。

重厚なグリムハンズの世界をあなたに。

残酷で贅沢な物語

  • 投稿者: 退会済み   [2019年 04月 01日 19時 41分]
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深更の月明かりに浸る古びた図書館が一つある。

ため息が出てしまうような一節から始まる物語を誰にも止めることはできない。予め存在する物語に対して物語を創作するには「物語」という大きな想像力への愛が不可欠である。

 童話というものが実は残酷であったという事は既に多くの人に知られているが、プロップによって類型化がなされたことはあまり知られていない。
 勇んで言うと『グリムハンズ』とは類型化の極致である。数々の童話がキャラクターあるいは異能に凝縮されて縦横無尽にかけめぐる(それは単なる運動だけを指さない)。

人々の想像力を乗せた童話を一挙に眺めることのできるこの作品を贅沢な物語と言わずになんという。物語の源泉を掘り尽くしてしまった本作品を読む者に残された唯一の贅沢、それはため息をつきながら頁をめくることだけである。

3重のドラマが生み出す感動を"あなた"に。※圧倒的な厚みに押し潰されないよう、お気をつけください※

能力自体にドラマをつけるなど想像できるか?
物語をモチーフとした怪物に、同じ起源を持つ異能。童話の、小説の、神話の。そんな一節から生まれた力。解釈の数が力であり、現実に物語を再現させる能力である

自身の力に向き合うことで、全てのキャラが濃厚なドラマを持っている
一般には知られていない力。全ての能力者が、それを正しく制御できるはずがない。能力で家族を失った者、能力に振り回される者。各々が重い過去を乗り越え、力持つ者の責務を果たしている

活動を通して紡がれていく、人の輪が生むヒューマンドラマ
魅力的な"生きた"キャラ同士が、ぶつかり、理解し、尊重し合う関係。その繋がりは学園だけでなく、警察、海外と広がりを生む

そんなドラマを内包するのは、死角のない美しい物語
敵の能力を推察する、推理要素。敵と戦う、戦闘要素。そこに3重のドラマが加わり、文量以上の感動が約束されている

童話の力を操り戦う、新感覚異能ファンタジー

  • 投稿者: ユエ   [2019年 03月 29日 21時 48分]
本作は、「グリムハンズ」と呼ばれる異能力を用いて、物語から生まれた怪物「ワード」と戦う、学園異能力ファンタジー。
 
 主人公の少女は、幼い頃よりなぜか火事に纏わる事故に見舞われ続けてきた。それが己の持つ異能のせいだと知らされる。過酷な運命を背負いながらも、同じ力を持つ「童話研究会」の仲間と出会い、「ワード」との熾烈戦いに身を投じることに。

登場する世界観は細部にわたって作り込まれ、異能と童話を結びつけるアイデアは、魅力的かつ、大変わかりやすい。キャラもしっかりと特徴づけられており、展開されていくストーリーを存分に楽しめるだろう。

そして、童話という元来残酷な部分のあるものをテーマに、本作もややダークより。血の匂いが漂うようなグロテスクシーン必見で、極限の迫力が表現されている。

異能力ファンタジーに欠かせない要素を詰め込んだ作品。

是非ご一読を。

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