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戦時中のガダルカナル島に繋がった現代のコンビニで、日本兵達の希望と悲哀が蘇る戦場叙事詩

  • 投稿者: 夜市よい   [2023年 03月 28日 21時 24分]
ある日突然現代日本のコンビニ近くに太平洋戦争中のガダルカナル島へ繋がるゲートが開通。
そのコンビニ店員な主人公の元に日本兵が続々やってきて通報したら防衛省まで出てきた。
誰がそんなゲートを作ったのか?を探るために実験する現代人たちと、
多数の餓死者が発生する悲惨な戦場を何とかするべく奔走する過去人たちによる、
コンビニというありふれた舞台に様々な思惑が錯綜していく全81話長編完結作品です。

本作はガダルカナル島に現代のコンビニがあったら戦局はどうなる?という発想を、
説得力ある人物描写と読みやすい文体によって見事に仕上げられている作品となっていて
一つの架空戦記ものとしても本当に良く出来ています。
戦地にある日本兵たちの希望と悲哀が伝わりしんみりさせてくれました。

(同内容を自サイトにも投稿しています)

いらっしゃいませ。旧日本軍兵士も利用するコンビニへようこそ。

  • 投稿者: あきじゃ   [2019年 10月 10日 23時 57分]
深夜、『俺』の勤めるコンビニに男がやってきた。

『貴様、日本人か?』

旧日本兵のガチコスプレ中らしい。
近くにあるサバゲー会場からのお越しだろうか。

男は売り物の水をその場で飲み、鞄に詰め、気絶。
――ロールプレイにも程がある!
『俺』は通報した。


……コスプレじゃなかった。

「1942年、太平洋戦争中のガダルカナル島」

『立つことの出来る人間は、寿命30日間
 身体を起して座れる人間は、3週間
 寝たきり起きれない人間は、1週間
 寝たまま小便をするものは、3日間
 もの言わなくなったものは、2日間
 まばたきしなくなったものは、明日』

飢えで死ぬ戦場。
男は、そこから時空を超えて来店したらしい。

その後も同地から、兵士はやってくる。
『俺』は彼らに水と食料等を販売する。

顔見知りになってしまった、旧日本兵に。
悲惨な結末をたどるであろう、先人に……

この天国は、とてもシビアだ。

  • 投稿者: ナユタ   [2019年 03月 28日 17時 51分 ()]
 この物語は語り口は軽くて馴染みやすく、
 作者様の抱く世界観もとても練られていて面白い。

 けれど根底にある切なさが、
 この小説の世界観を最大限に引き立たせています。

 手を伸ばせば救えそうな命はけれど、
 掬い上げた指の隙間から確実に零れ落ちてしまう。
 個人的に作中にある主人公の母親の言葉が胸にきました。

 悲しい歴史はほんの僅かに改変されるものの、
 大きく戦況が好転したりするわけではないもので……。
 それでも先を読ませる作者様の筆力に脱帽です。

 まだまだ続きそうなこの作品、是非ご一読下さいませ!
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