イチオシレビュー一覧

これは簡単に言うと男が女に転生するお話です。
ですが、それだけでは終わりません。

これはただ転生するお話じゃなくて生命のお話です。

私がこの小説を読んだきっかけはランキングを見ているとき、タイトルがパッと目に入ったからです。
そして読んでみるとただ転生するだけではなく、生命を大切にするお話だということがわかりました。

このお話は本当に泣けます。驚くほど泣けます。
みなさんも是非読んでみて下さい。

生きるとは何か？
もう一度言う。
生きるとは何か？

ささいなことで死にたくなるのは、何度もあるだろう。
全てどうでもよくなり、投げ出したくなることも。
これはそれを実行してしまった主人公の物語である。

他人からすると「どうしてそんなことを」と思われることでも、当事者には大事件だ。
親の気持ちを、子供は理解できない。
初めてその立場になって理解できるという表現が、子、親、祖父母と世代をわけて描かれている。
そして、自分がその立場になってみて気づくのだ。
「どうしてそんなことを」その理由に。

これは、バトンを繋いで子供が大人へと成長する。
そんなお話。

小説を漁っていると、ときたま「こいつは名作だ！」と思うような作品に出会うのだけど、そういう物語を読了すると、充足感というか、えもいわれぬ満腹感のようなものを覚える。
そんな作品はたいてい長編で、しかもプロ作家さんが丹精込めて練ったであろう物語でさえ、この感覚を覚えるほどの「当たり」は稀だった(あくまで個人的な感想の話だ。むろん他にもとてもいい作品はたくさんある)。それをまさかなろうの短編で、久しぶりに思い出すことになろうとは。

あらすじはあえて書かない。他のレビューワー様が書いているし、それより是非とも自分の目で、心でじっくり読み込んでほしい。それはオリンピックの聖火のように燃え盛っているかもしれないし、ろうそくのようなひっそりとした炎かもしれないし、そこは人それぞれなのだろうけど、いずれにせよこれを読み終えたとき、あなたは自分まで受け継がれてきた命の灯火に思いを馳せることになるだろう。

人の寿命も、命も、呆気ない。
儚いからこそ、散り際が美しい。

命を自ら散らして、人生を終わらせてから
別の命を携えて、新たな人生が始まった。
輪廻転生という、不可思議な体験。

親も参戦する受験戦争。合否で世界が変わる。合格すれば、親も喜ぶ。就職活動での選択肢の数が多くなる。逆に、不合格になれば、親は子供を叱るだけじゃない。落第点を押して、自分の子供なのに、『子供じゃない』と否定し、挙げ句の果ては、何かにつけて『受験の失敗』を言い訳に使う。

そんな親にも、不合格になって受験に負けてしまった自分にも、嫌気がさした主人公の青年は、生きる気力を喪失して、命を散らしてしまう。そして、生まれ変わった先が 異世界 でなくて、生まれ変わった先が戦前の母国だった。

愛とは、生きるとは、何か。そして、ラストは読者の目で御確認を。

冒頭、主人公は受験に失敗し家族からの重圧など様々なことに思い悩み自殺を。しかし目を覚ますと東京大空襲前の日本。その、ある家の娘として生まれ変わります。
そこからの家族との絆を深め、しかし別れを経験しそして出会いも訪れて。自分が子供を育てる立場になり、かつての両親の愛情を少しずつ理解できるようになりました。

ここからも続きはありますがネタバレになるので割愛します。自分自身で読んで解釈して欲しいです。そして、『みく』が何をして生きるのかを特に深く読んでみて下さい。