イチオシレビュー一覧

▽レビューを書く

戦火と青春のSFスクール群像劇

  • 投稿者: 某霊   [2020年 08月 12日 22時 17分]
ド名作である。

十二人の高校生があるVRゲームをプレイする中で奇妙な感覚を得たことから潜む真実を知ってしまう、という作品だが、主題は決してサスペンスや、ましてやゲームプレイなどではない。

これは、極限状況に置かれた彼らが苦悩し、己の本質と向き合い、生き方を見出していくという、真っ直ぐな命の物語である。

彼らの中に超人はいない。困難な状況をあっと言う間に解決などできはしない。
彼らの中に英雄はいない。誰もが自分と想う人の心に揺れる等身大の少年少女たちだ。

だが故にこそ、彼らの戦いは安くない。
死を眼前にして、それでも彼らは足掻き続ける。最期の言葉にすべてを託す。

強いられた戦いに呑まれ、偽りの記憶に消えゆく中で、全存在をかけて抗い爪痕を残していく姿こそ、彼らの戦いであり、青春である。

一度腰を据えて読んでみて欲しい。
確かな筆力と熱意で書かれた物語が。「本物」が、ここにあるのだ。
↑ページトップへ