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一度終わったはずの物語

  • 投稿者: 絹野帽子   [2011年 02月 25日 20時 51分]
 殺人鬼の男が死に掛け意識を失う所から物語が始まる。

 男が目覚めると、平和な教室にいた。
 そこは死と隣り合わせの生活を送る未来ではない過去の世界だった。

 この作品の面白い所は、主人公の男は決して善人ではなく、とても人間らしい所だ。
 男は持ち前の冷静さで、その状況に適応してきながらも、心中で平和に慣れてしまうことへの葛藤と不安を覚えてしまう。
 非日常が当たり前だった男が、温い日常に強く反応してしまう心理描写が、とても面白い。
 特に男がハサミを探す時のシーンなどは注目して欲しい。


 今連載されている『ひょうりばーす』は、同作品のリメイクである。

 リメイク前でも十分面白かったのに、それで満足をせず、さらなる高みを目指す作者を尊敬する。

 『ひょうりばーす』は、完結するまで付き合いたいと思わせてくれる作品だろう。

もし人生をやり直せるなら

 これはとある殺人鬼の物語。類い稀な能力で殺人を繰り返した主人公は、ついに追い詰められ、瀕死の重傷を負う。だが目覚めた彼が見たものは、平和な教室と中学生に戻った自分。

 緩やかな日常に戻った彼は、今度は殺人とは無縁で、穏やかな日常を送ることを決意する。そして訪れる平和な日々、幸せな時間。だが彼の殺人衝動は完全に消えたわけではなく、そして以前は起こらなかったはずの出来事が彼の周囲で頻発するようになり・・・?

 そんなダーク&シリアスな話を作者がライトなタッチで贈る作品です。文章も読みやすいですし、平和な日常と、ダーク&シリアスな部分とのギャップに引き込まれていきます。
 読む作品に悩む人は、ぜひ一度クリックしてみてはどうでしょう? 損はしないと思います。
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