イチオシレビュー一覧

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読み終えてしまうのがもったいない!

子供の頃、見たことはありませんか?
テレビアニメで、いろんなタイプのキャラが出てきて、ドタバタして面白かったり、話によっては胸がきゅっと締め付けられたり。こちらの作品はそういったタイプに感じます。

ときに恐ろしく、けれど優しいキャラクターたち。
お話も滑稽なものもあれば、何だか考えさせられるものもあって、お気に入りのエピソードを探すのも楽しみです。

続き物のマンガや小説を読んだときに、「あーあ、読み終わっちゃった」と思ったことはありませんか?
今、私はそんな気分でいます。光輝く日向から、日陰へ引っ込んだときの気持ちに似ています。日陰だけれど、太陽熱がまだ残っていて温かい、……そんな気分です。

恐れと畏れ――その両方を包む、ひたすらに優しいホラー。

ひたすらに善人である「僕」と、郷愁溢れるアパートに住む妖怪たちの交流を軸とするこの物語は……。

とても優しく、滑稽に残酷で、なにより涼やかだ。


しかし、ホラーでもある。


それは、これを読むあなたの心を映すからだ。


妖怪たちの仕打ちに「恐れ」を覚えるなら、あなたは自らの所業を振り返らねばならないだろう。
彼らは見ている。不変の倫理を害するあなたを害すべく。

妖怪たちの在り方に「畏れ」を感じるなら、あなたはその生き方を一層心がけるべきだろう。
彼らはそこにいる。普遍の倫理を守るあなたを守るべく。


そう――この軽快な物語を楽しむうちに、いつしかあなたは自然と、自らを省みることになる。

――連綿と世に伝わってきた、純粋な「正しさ」……。

それを体現する妖怪たち――その恩恵を受けるに値するかどうかを。

そうして、己を省みるあなたを――。
彼らはきっと、迎えてくれるはずだ。

妖怪は妖怪の理屈で生きる。だから、優しい妖怪もいる。

  • 投稿者: 退会済み   [2019年 07月 09日 17時 30分 ()]
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人間と妖怪の恋は成就しないものである。
異類婚姻譚の行き着く先は、多くの物語において別れが描かれる。
ましてや、雪女と人間の恋だなんていうならなおさらだ。

一方で、人は他者と分かり合えるだろうか。
当たり前だけれど、他人の心を読み取るなんてできない。同じ体験をしていても、考えていることは違うでしょう?
それが、妖怪と人間ならきっとなおさらだ。だからこの物語は妖怪と人間、二つの側面で語られる。

たった一人や、二人だけでは、その隔たりを埋めることはできないだろう。雪女と人間の、離れてしまうさだめを繋ぐものがあるとするのなら、その一つはきっと少しだけ優しく、気の良いものたちの縁である。そんな優しい糸で、この物語は織り上げられていると思うのだ。

気のいい妖怪たちに会いたくなったら、ぜひ『メゾン・ド・比嘉』へ。一癖も二癖もある妖怪たちが、きっと温かく迎えてくれると思うのです。

妖怪アパートに何か用かい?

  • 投稿者: 暮伊豆   [2019年 07月 04日 01時 47分]
おんぼろアパートの登場人物を大別すると……

管理人。
住人。
そして来客者。

三者三様の思惑が織り成すほのぼの日常ファンタジーである。

同じ出来事でも視点が違えばガラッと別物。
何気ない言動に隠された深い意味。
可愛らしい行動の裏に潜む狂気。

いや、それを狂気と呼ぶのはおかしい。
人間の日常と妖怪の日常は違うのだから。

それぞれの日常が交わる場所。
それが妖怪アパートなのだ。

謎多き住人達。
しかしもっと謎なのは主人公だ。
秘密が明かされる時は来るのか!?
クライマックスは近い。
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