イチオシレビュー一覧

今まで色々なストーリーで楽しませてくれたキノさんの最新作。

もふもふという単語からするとまったりなイメージが湧きますが、序盤に登場人物のしっかりとした掘り下げがあり物語に引き込まれます。

魔王の娘と主人公とのかけあいや関係性は必見です。
プロの作家が描く世界を今後とも楽しみにしていきましょう。
とってもおすすめです。

これはもふもふ動物に囲まれながら、のんびり異世界の片田舎でスローライフを楽しむ話だと言う。前作で全力で時流に逆らうような作品を書いた木野氏も今度ばかりは世間受けする内容で書籍化に漕ぎ着ける腹積もりなんだと軽い失望感を覚えていた。
しかし、この話はそんな生易しい話ではなく、実はもっと重く深いテーマがあった。主人公はただ単に「悪」だからと言う理由で、後を託されることになる娘の父である魔王を手にかけた。主人公は娘に癒され、やがて生来の繊細な心を取り戻すだろう。だが、その時彼女は自責の念で苦しむことになるのが目に見えているが、木野氏は彼女をどう立ち直させるのか。木野氏の筆力や如何に。これは作者と主人公の真剣勝負の場なのだ。この場に立ち会えた読者は幸運であろう。
これはひょんなことから邂逅した主人公と魔王の娘が血縁の壁、種族の壁、世界の壁、そして恩讐すら乗り越え、真なる親子関係を築く物語である。