イチオシレビュー一覧

「出来損ないのクズ肉」

それが少女の評価。
あまりにも虚弱すぎて、周りは彼女を見捨てた。
何もできない役立たず。
母の愛に生かされているだけ。

でも、死にたくないから。

異なる世界の記憶を使って、変えるのだ。

灯りや風を生み出す不思議な石があって。
男は海の上を歩き、女は喧嘩が大好きで。
馬鹿みたいに強すぎる人類と、海の怪物。

そんな世界で、少女は足掻く。

物語が、始まるまで。

違う世界の知識を持った主人公、アンデュロメイアの足掻きと成長と、その結末の話です。

一見見るとこの話、異世界転生物の皮を被って、筋肉で、ゆるゆるでふわふわしています。
ですが、中身は全く違うものが流れています。

気付き、足掻き、成長し、悲しんで、挫折して、また成長する、主人公の生き様。

その根底を、優しさと、その世界の文化と、圧倒的な科学的思考が支えているのです。

劇中の言葉を使うのであれば、
表面は筋肉でいい感じにふわっとしていて、それなのに駄肉はうまあじで、下地はゴリゴリのSFです。
一言で言うと獄いです。とても獄いです。

温かくて頑張っていてすごくて、読んでいた私は最後に涙がでました。

私の能力の及ぶ所では無い素晴らしい作品が故に、拙いレビューになってしまった事をお許しください。
気になった方は是非ご一読を。
きっと素晴らしい世界を堪能できるでしょう。

前レビュー者も書かれているように、一人称の異世界転生もの。

一人称の場合、その主人公の視野外のものは描かれないので、今後の展開がとても楽しみ。主人公の視野が広がって、今後開示されたりすることも一つの成長なのかなと。
一章最後の時点でも、よく読むと、前のほうに何気なく書いていたことが、後から「あれ、この時のアレって・・・」となったりするので、そういう意味でも面白い。なので、現状で「？？」となっていることも、今後描かれるハズ・・・。ですよね？

ほんわかな状況描写・会話に、サクっと重めな設定を挿入してきたりと時々油断できないカンジですが、総じて文章はホンワカでハートフルな印象。いい状況を作るには一旦しゃがんでタメを作らねばならないからね、仕方ないね。

完全オリジナルな世界観は、その描写がとても大変だと思うので、ある程度状況が出そろった(と思う)第二章からの展開に今後も期待したいです。

主人公アンの語り口調で進むので文体が柔らかめ。
一応異世界モノではあるのですが、
異世界モノっぽい無駄なプロローグがなく、
ありがちな序盤からの無双がないので、
落ち着いて物語に入れます。

☆キャラクター
【アン】
主人公。うまあじ担当。
日本人の記憶を持つ。
それが何故なのか、どういった人間の記憶なのか、今後明かされていくんでしょうか。
とっかかりは料理でしたけど、基本は世界観と人間性のギャップに、アンの記憶で無双するような内容。

【おかあさま】
アンとの家族の絆が感じられる描写がいいなぁ。
やっぱり家族って無条件に大切なんですわ。
アンがポンコツな箇所に突っ込んだりするように、
世界の中では「デキる人」なんだけど、
我々の常識からみると「どこか抜けてる人」に見えるギャップが良い。

【おばさま】
理解者。料理人。
彼女が料理を強く肯定してくれたことによって物語は動き出す。