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懐かしく不思議で、悲しいけれど優しい。

  • 投稿者: 砂礫零   [2019年 08月 31日 00時 36分]
小学生の時のことだ。
学校の帰り道に、廃屋があった。
破れたガラスの隙間から中をそっと覗くと、薄暗がりの中に、セピア色の家族写真が浮かぶ。
問いかけるような少年の瞳。

廃屋の裏には暗い山。
大人たちが「入ってはいけない」と言っていた。
それでも子どもたちは、そこに入って遊んだ。

不思議な廃屋。不思議な少年。不思議な場所。
子供の頃の世界は、不思議なものがすぐ隣にあった。

『鬼灯の袋の中の夢』この物語を読んで、そんなことを思い出した。

危険だけれど、惹き付けられる。覗かずにいられない。
大人になった今も、現実が霞むほどに、心の中に鮮やかに蘇る世界……

懐かしく不思議で、悲しいけれど優しい。
何度も読みたくなるお話です。
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