イチオシレビュー一覧

その世界に嘗て魔法はなく、科学が世界統べる法則であったが、突如未知の力たる魔力が発生して魔法や魔獣が世に溢れ、農業や牧畜が消失遺失する程に荒廃し、人類は要塞都市を拠点に狩猟採集生活を余儀なくされた。そんな世界で魔力発生以前の古代文献を整理しているレキウスは、失われた古の科学たる錬金術の知識を発見する。魔力溢れてなお潰えぬ世界法則の再現と応用によって、彼は魔力の謎を解明していく......
魔力と魔法、魔獣といったパラダイムシフトを経て嘗ての技術や価値観が意味を喪失した世界で、敢えて嘗ての文明の再現を試みつつも、更にその先を行かんとする人々の奮闘が熱いドラマを織り成し、そこにヒロインたちのレギウスと距離が縮まりそうで毎回上手くいかないラブコメディが作品に刺激的な色を添えている。

ファンタジー小説を読んでいて時々思う。
その魔法の根拠は何？何がどうなってそうなるの？
ストーリーやキャラ自体は楽しいのだけど、でも魔法の技や技術がいつも「そういうもんだ」だとちょっと食傷気味になる。
こちらも厳密な理論は求めてない。
でももうちょっと理論背景があればなぁ。

SFではハードSFというジャンルがある。
物語の根幹に仮想的な理論や技術がありそれを元に様々な舞台装置が構築されている。

この小説はキャラのやりとりを楽しむ点ではライトノベルである。
でも物語の根幹には理論がありそれを元に魔法や技術が構築されている。
巷のファンタジーとは一味違うハードファンタジーが楽しめる。

かつて栄えた文明の中心が滅び、地上を魔獣に支配された世界。
魔力を扱えるものは騎士として魔獣を狩り、その立場を強固なものとしていた。
これは、名門とされる家に生まれながら魔力に目覚めず、使用人扱いの文官に落された青年が、『錬金術』と出会い、世界の謎を少しずつ解き明かしていく物語です。
先人の残した資料などを読み解き、彼自身が培った縁を活かしながら、着実に成果を挙げていくんだから頼もしいですね。
多くの知識が失われ、歪な形で運営されている都市の未来を変える、そのはじまりを括目して見よ。

初めてのレビューですので拙筆ご容赦ください。
本作は、「魔術なんて使えれば十分」と考えている騎士たちが強い権限を持っている世界で、魔力を使えない主人公が魔術の基礎理論を解明することで難題に立ち向かうお話です。
理系大学院生である私はこの話を読むと最近役に立たない、産業に結びつかないと槍玉にあげられがちな日本の基礎研究を思い出します。
本当は産業にとっても基礎科学の体系化がとても重要であることが物語形式でわかる名作。小学校の理科の教科書に載せるべき。

よく勉強しているオタクさんなら錬金術(アルケミー)から化学(ケミストリー)が発展してきたのはご存じのこと。
この小説で言う錬金術はほぼほぼイコール化学です。とりあえず第1章では。
さて主人公レキウスは魔力持ちの騎士が幅を利かせている世界で門閥騎士家からドロップアウトした魔力無しですが、名家の出らしく教養があったので文官になりました。
ただし職場では腫れ物扱いゆえに窓際コース、埃を被った古い文献の整理を命じられ、誰にも顧みられることのない古い学問と出会います。
鉛から黄金を作り出すことは終ぞ叶わなかったもののその試行錯誤の過程に生み出された仮説と実験手法に可能性と面白さを感じたレキウスは、この古い文献から甦らせた錬金術の手法によって自分が触れることが出来なかった魔力の謎に挑みます。多分。