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善と悪との構造的対立とエントロピーの法則

  • 投稿者: 退会済み   [2019年 10月 18日 16時 28分]
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善と悪との対立とは何かというと、多分、エントロピーの増大と減少の問題に近いのかなと思っている。つまり、あまりに自由が進みすぎると、ある種の自由におけるバブル状態が発生して、弾けてしまうのである。その際に、カオス化した自由に対して、棒でバチバチ叩いて諌める存在が必要になるのだ。これが善の存在である。しかし、しのぶ先生は、増大する自由と、諌める秩序をぶつけ合わせることは避け、並列化して、両方をさらに増大させるという荒技をこの小説において成し遂げた。おかげで、悪も自由もやりたい放題になってしまった。というよりも、善の方がより迷惑な気がするのは私の錯覚であろうか。ひょっとしたら、この互いに巡り合わない脱臼小説は、現実においては実は対応しあわない善と悪という構造を、なんとか物語化してむりやり対応させているように錯覚し、心の安寧を得ようとしている我々愚かな人間のことを風刺しているのかもしない。
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