イチオシレビュー一覧

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『女の責任?』 凄く正直な男女のお話。

『私は奈緒子さんにも責任を取ってほしい』との発言が飛び出してくる第13部分の問題シーンは必見。

社会通念と夢との狭間で悩み、かつ愛する人との関係までも掴み取ろうとする主人公の正直な生き方への描写が凄い。

非道徳だ、と侮蔑するのもいいだろう。倫理は大切であると思う。だけれども、現実世界では味わうことの難しいセピア色の恋愛を体験できるのも、創作たる小説の特権である。

一般向けには難しいかも知れないが、極端にまでも正直な生き方をする主人公の生き方を、興味のある方には是非読んで欲しい。

過ちを通して成長する、1人の女性の物語。

  • 投稿者: 砂礫零   [2020年 06月 25日 10時 30分]
不倫というとまず世間で叩かれがちだが、本当に不倫してやろうとしてする人は、少ないと思う。それは 『恋に落ちる』 という、自分でも多分どうしようもない事態なのだ。

不倫という問題を扱っている本作の主人公、菜穂子は当初、音楽の才能のみで生きてきて、それゆえにお子様思考であり、恋で周囲が見えなくなってしまうような女性として描かれている。
受け入れられない人も多いだろう。
しかし、そこで読むのをやめないでほしい。

彼女は不倫の子を妊娠してしまったことで、悩み、もがきながらも成長していく。身勝手なお子様から、周囲に感謝することを知りつつ自分の道を選ぶことのできる、大人の女性へと変わっていくのだ。

人は時に愚かで身勝手で間違いを犯す。
けれど、それは許されないほどの悪だろうか?
そうしたことを考えさせられる作品である。

最後に、重いテーマに真っ向から取り組み、書ききった作者の健闘を讃えたい。
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