イチオシレビュー一覧

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高密度に圧縮されたる時空間と文明の秘史、そして異界と廃墟の混合物を解き明かす崩壊世界譚

本レビュー執筆現在、16部にも及ぶ超長編でありながら、その全容は未だ見えてかけてきたばかり。
SFにクトゥルフにパニックホラーにと、その辺りのイイところと美味しいところを全部乗せしたかのように贅沢過ぎる未完継続中の崩壊世界である。

にも関わらず、話ごとの情景描写は丁寧かつ洗練。形容も筆舌もし尽くし難いほどに、筆者パウロ氏の世界観の広がりは奥妙を極めている。

比較的早い段階で主人公レイラは強化されていくが、彼を取り巻く絶望的な世界の環境もまた、その残忍な本性を戯れのように垣間見せてくる。
それでも、時に想像を超えるような巡り合わせによってレイラとレイラに引き寄せられた者達もまた道なき道を切り開いていくが……。

1を掘り出せば10もの謎が生まれる謎めいた廃墟の世界で見つかる真実群は、思うに、きっと、かの青い鳥の如くに「とても身近」に、そして「最初」からそこにあったものなのかもしれない。

なろうの隠れた名作

  • 投稿者: 夕霧   [2023年 07月 10日 07時 18分]
高度な文明が崩壊した世界で、記憶を無くした主人公がその成長と共に世界の謎の一端に触れ紐解かれていく様がたまらなく面白い。

様々な勢力が入り乱れる中で奇妙で恐ろしき異界を冒険したり、レイダーなどの無法者達が跋扈する市街地や旧世界の名残が残るコロニーにいる恐ろしき権力者達、そして常識では考えられない怪物達などと出会い戦う様はまさに手に汗を握る戦闘で様々な冒険を堪能出来る。
そんな中でも主人公の仲間となる者も増えていくのだが、一人一人が魅力的な者たちでこの世界で確かに息づいているのを感じさせる存在だ。

がっつりと読み込んで世界観に浸り味わいたい読者にはぴったりの物語であり、このなろうにある隠れた名作であり怪作である。
サイバーパンクでありポストアポカリプスでありコズミックホラーでもある。
このジャンルの中に一つでも好きな要素があれば絶対にこの作品は面白い。

悍ましい化け物や略奪者が蔓延る崩壊後の世界を仲間と共に生き抜き、抗っていく

  • 投稿者: あむんぢ   [2021年 12月 01日 03時 20分]
読んでるだけで気分が悪くなるようなキモチワルイ敵だったり、強すぎて絶望を感じるような敵だったり。そんな怪物と略奪者がたくさんいる世界を主人公たちは生き抜きます。

一番魅力的だと思う点は増えていく仲間ですね。主人公は話が進むにつれて、頼れるユニークな仲間がどんどんできます。その仲間は安易なイケメンだとか巨乳美少女だとかじゃない、人間ではないキャラだったりします。そのキャラたちも個性がちゃんとあり、ちゃんと生きている魅力的なキャラクターです。

あと個人的に評価したいのは読み手への親切さです。
登場人物が多いと忘れてしまいがちですが、この作者さんは章が変わる毎にそのようなキャラクターの説明をいれてくれます。

ポストアポカリプス物が好きな人は是非読んでみてほしいです。

惹き込まれる悍ましくも逞しい世界

崩壊した世界、略奪者、異形の生物、遺物を拾い他人を出し抜き生きることで精一杯な住民。
そんな世界で目覚め、遺物拾いのスカベンジャーとして過ごしている主人公の物語は
人食いの略奪者達に囚われていた女性との遭遇から始まります。

セリフの一人称は俺、語りでは私、名前はレイラですが主人公は男です。
最初は戸惑うかもしれませんが、読みすすめると他にない良い味を出してきてまったく気にならなくなります。
2話の女性との遭遇まで読みすすめるともうこの世界に惹き込まれて止まらなくなると思います。

読み直したい作品はいくつかありますが、この作品もそのひとつになりました。
200万文字、総合評価順で検索してかなり後半にあった作品ですが、このクォリティはすごいと思います。
書籍化にも納得。

もっと多くの人の目にとまるようにイチオシしておきます!

複数の貌を持つ作品

数あるなろう小説の中でも特異な作品だと思う。
基本となるのは終末観ただよう未来世界のサイバーパンクなのだが、それにとどまらない。
ときに物語はムアコックのヒロイックファンタジー「エルリックサーガ」のような様相を呈することもあれば、クトゥルフ神話のようなコズミックホラーの一面も読者に垣間見せることもある。
そして、善と悪が混沌とし底が見通せない世界観。その世界を紡ぎだす確かな表現力。
素人の所見ではあるが、本作はいわゆるラノベのレーベルではなく早川書房あたりから出版されてもおかしくない領域ではないかと思う。
目の肥えた読者にお勧めする、紛れもない逸品である。

良質なポストアポカリプス物

  • 投稿者: 一郎太   [2020年 07月 19日 14時 06分]
世界が終末を迎えて、荒廃した世界を冒険していく物語です。
基本となる世界観的には、ゲームのフォールアウトに近いかなと思います。

記憶を無くした主人公が、AI…?の相棒と共に、生き残るために廃墟の遺物を探して日々彷徨い歩いていきます。

冒険の中で得ていく信頼出来る仲間たちや旧時代の遺物、保持する拠点の強化等、サバイバルで人物の充実していく様子はワクワクします。

立ちはだかるのはレイダーやコロニーの権力者が雇う傭兵、旧時代の病で変異した悍ましい化け物たち。
そして、科学では説明出来ない怖るべき存在達が待ち受けています。

彼らの前では心強かった武器達があまりにもちっぽけな物だったと思い知るでしょう。

荒廃した世界、廃墟の街に潜む困難、そして地や海の底に佇む大いなる存在に心惹かれたら是非読んでみて下さい。

ん?…ああ!窓に窓に!

この素晴らしき世界

  • 投稿者: 月ノ龍   [2020年 06月 29日 14時 02分 ()]
記憶すら定かではなく、己でさえ理解しかねる身体能力を駆使して主人公レイラは相棒であるカグヤと共に荒廃した世界を探索していく。
彼らは時に友に、武器に、過去に出会いつつ廃墟の街、旧文明の施設、異界を探索し、機械兵器やミュータント、怪物、人間、狂気と戦い、死と隣合わせになりながらも日々を生きていく。

この作品の特色はその精緻で謎と神秘に満ち溢れた鮮明な世界観でしょうか。綺麗で綿密な言葉の数々によって形作られる濃密な世界観は、私たち読者の想像力によってさらに深みを増していくでしょう。
しっかりとした世界観と物語を味わいたいと思っている人におすすめします。
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