イチオシレビュー一覧

物語の展開はとても自然で、各章の導入が一見すると突発的な出来事に見えても、読み進めていくうちに前話で既に伏線が張られていたことに気づかされ、物語に深く没入できます。

特に印象的だったのはキャラクターの扱い方です。単なる役割消化のために登場して使い捨てられるような“消耗品キャラ”ではなく、それぞれにきちんとした背景や感情が積み重ねられており、世界に自然と溶け込んでいます。このようにキャラクターを無駄にしない構成は、作品全体に厚みと説得力を与えてくれます。

戦闘描写やヒロインたちの強い恋情により、読む側としてはやや疲れを感じる場面もありますが、各章の締めくくりが綺麗で余韻を残すため、ページをめくる手が止まりません。

また、敵役にもキャラクター性を持たせてはいるものの、無理に“浄化”しようとはせず、切るべきところはしっかり切っていく姿勢にはとても好感が持てました。

主人公のノイルはおもしれー男である。
ダメ男であるゆえにプライドをかなぐり捨てた行動を取るが、
自己評価の低さゆえに自らを犠牲にすることもできる。
ここぞという場面では「やる時はやる男」っぷりを発揮し、ヒロインたちの苦難を救っていく。

そのせいで偏執的な愛情を向けられるようになっていく。
「私を救ってくれたノイルを、私が救ってあげなきゃ」という具合に。

かわいくて運命的な出会いをしたヒロインたちに囲まれているはずなのに、なぜか地雷原に見えてくる。
その地雷原の上で日常生活を送っているのがノイルである。
こうなってくると羨ましいよりも先に「よく生きてるなこいつ……」という感想が先にくる。
傍から観る分には実に見ごたえのある見世物である。


コミカルに話が進みつつも、シリアスに決めるところは決める。
章ごとに話が綺麗にしまるのも良し。