イチオシレビュー一覧

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自分の匣も開けて欲しいと思う程

 本作を勧善懲悪物と称するには言葉が違うのかもしれないが、本作からはそれに近いものを感じると同時に、良い教訓を得る事も出来ると思えた。

 まず本作を読むと、人間の心というものは救える場合と救いようのない場合があるという、多くの人間が気づきながらも忘れがちな事実をハッキリと理解し直す事が出来る。
それを前提に、本作ではまだ善性が残った救える心については教訓を混じえながら救い、悪性に染まった救えない心についてはしっかりと制裁を与えている。
前者については自身を見直そうという気持ちになり、後者については爽快感を得る事が出来る良い構成になっており好感を持った。
それが冒頭で勧善懲悪物に近いと書いた理由ではあるが、本作はそのような一つの様式美を、匣という面白い設定を使って更に昇華させているように感じた。

 字数制限の為にここまでになるのが惜しいが、更に言うならば本作は抜群に読みやすい作品である。

心の綺麗な人を幸せに、逆の人には手厳しい報いを。

まずは安心して下さい。本作はホラー作品となっているようですが、基本的に善人は報われて、性格の醜い人はざまぁな展開になります。
メイン登場人物はどこにでもいるような男子や女子ですが、彼ら彼女らは年相応の悩みを抱えており、そんな心の闇が開かれることで、本当に自分が望んでいる本心に気付くのです。
それを開くのは人ならざる二人のもののけですが、あくまできっかけを与えてくれるだけで、幸せになれるかどうかはその火と次第で魔法に頼って「はい、望みが叶った」とならない辺りが本作に魅力です。
怖くないホラー、心が温まるホラーが好きな人なら読まれてみてはどうでしょうか。

あなたの『匣』、開けてみませんか

  • 投稿者: 相原玲香   [2020年 05月 27日 13時 03分]
林の奥の小屋の中。
そこに囁かれる噂があった。

噂の主。彼の名は、筐鍵明人。
同居人の妖狐カクリと共に、どんなに固く閉ざされた「匣」をも開けてくれる。

彼らが開けるのは、形ある「箱」ではなく……『匣』。
そのお代は、人間の記憶。

今日も彼らの許へ、固く重い匣を抱えた依頼人がやって来る――――…………。


完結した第一章で訪れた依頼人は、それぞれが全く異なる結末を迎えます。
物語はこれからどのように展開していくのか?
そして、筐鍵明人とカクリが記憶を集める理由とは……?
今後に注目の意欲作です!
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