イチオシレビュー一覧

ロードムービーを観ているような、不思議な作品だ。
事実として主人公であるラトスは旅をしている。
それは現実の世界しかり、また、夢の中の世界しかりである。
彼の旅の目的は悲しく、遣る瀬無い。それがこの物語の根底に流れるセピア色の旋律と重なり物語に深み、妙を与える。
作者の筆力は、この、一見すれば平坦とも思える作中シーンの場面場面を巧みに、派手ではない実直さで描写して読者を魅了する。
ふ、と心に届く瞬間が何度かある。人は人らしさに触れた時、最も心揺り動かされる。これはそうした作品だ。
マスコットのようなペルゥという存在は、重くなりそうな話を軽やかにする。
戦闘場面も地道な筆致で丁寧に描かれ、世界構成含めファンタジーとして十分な読み応えがある。
美しい作品だと私は思っている。

さあ、あなたも彼らの夢の世界を旅してみよう。

簡潔に言えば、夢の世界で冒険する話である。
子供の頃読んだアリスやオズの魔法使いのような児童文学を思い起こさせる。
童心へ返ってワクワク感を感じたい人にオススメ。

あらすじ↓
突然、消えてしまった王女を探すため、傷の男ラトスと王女の侍女メリーは旅に出る。
彼らが入り込むのは夢の世界。

洞窟から果てしなく広がる色鮮やかな草原へ……
生気を失った人々がさ迷う城下町。
現実に近くて遠い、言いようのない違和感を感じる世界。天然でおおらかな性格のメリーやネコのペルゥのやり取りは不安感を緩和させる。

一方、物語の所々から時折覗いてくる「恐」が絶妙である。

不思議な夢の世界で冒険をしながら、主人公達はきっと大切な何かを見つけるのだろう。

童話に通ずる雰囲気を残しながらも、大人向けの作品に仕上がっている。