イチオシレビュー一覧

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言葉が生きている これぞ小説だ これが言葉で紡ぐ生の人間だ

とある先天性の病に苦しむ人々を生き写しにした本作。

現代のタイムリーな話題を取り入れつつ進行するこの物語は、身近に感じてしまって恐ろしい。

病を罹患している者も、その周囲の人間も、やはりその病に振り回されてしまう。そこにあるのはそれぞれの人間らしい感情。

差し伸べられる救いはない。放り投げられた絶望の源を、受け取った人間がどう処理するか。これは、発達障害が身近になり、災害も増えてきた現実も同じだと感じる。

筆者の圧倒的な筆力と、明確な描写に溺れてしまいそうになる。言葉ひとつひとつが生々しく生きている。だからこそ我々人間の心に響くのだと思う。

短い物語が並ぶ群像劇短編集。ひとつ読み終えたとき、あなたは何を感じるか。

「この世界を生き抜く人々へ」

  • 投稿者: 雪白楽   [2020年 07月 13日 11時 55分]
 どんな言葉で飾っても、生きる事は苦しい。一度でもそう感じた事があるなら、きっとこの群像劇はあなたの心に刺さるだろう。

 群像劇の醍醐味は、短編に散りばめられた人物模様がどこかで繋がる瞬間に感じる、宝探しのような愉しみにある。

 物語の鍵となる「嫌老障」……恐らく架空の精神障害は、しかし現実に存在するかのような重みを持って物語世界に根ざす。重いテーマでありながら読み手を立ち止まらせないのは、偏に作者の技量の高さ故だろう。

 この鍵がこれからどんな物語の扉を開けて行くのか、先々の展開が非常に楽しみな所だが、いずれにせよ現代社会の抱えた問題に一石を投じる作品と成り得るのではないだろうか。

刻まれる時が浮き彫りにするリアルな人間像

  • 投稿者: 時田翔   [2020年 07月 10日 23時 45分]
高齢化社会に生きる年老いた母親と息子。
お互いを思いやり、仲睦まじいはずの親子の間にある、わずかな違和感。
これこそが、この話の主軸たるものです。

チートも、ご都合主義もありません。
そこにあるのは、ただただシビアな現実。

慈愛、焦燥、憐憫、悲哀

さまざまな感情が渦巻く中
登場人物たちは望まずに課せられた運命に抗い、そして答えを探します。
これは、そんな物語。

圧倒的な文章力で綴られる真の群像劇
その扉は今まさに、ここにあります

噎せ返るような人間臭さを体感せよ

短いタイトルに集約された「恐怖」に自分はまず打ち震えた。これはホラーか?と思わせるタイトル。
あらすじはない。それが逆に怖い。

そして読んでみる第一話。
ただの母一人子一人の暖かい物語。
母は息子を大事思い、息子は母を大事に思う。
そんな何気ない2人の家族の絆の物語。
ただ1つの違和感をのぞけば…。
そして一話の最後に語られる違和感の正体。

そこから紡がれるその「正体」が織りなす人間ドラマ。
引き込まれずにはいられない。

タイトルで分からない?あらすじがない?
細けぇこたぁいいんだよ。とりあえず読め!!
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