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現実と虚構の狭間

地味な幼馴染は、かつては明るく元気な子だった。実は彼女はVtuberで、配信している間はかつてのような元気っ子のキャラに戻る。
そんな彼女と、配信の手伝いをすることになった少年の物語だ。

本作にはふたつの虚構が存在する。ひとつは主題であるVtuberで、美少女キャラの皮を被っている間の、変化した性格。
もうひとつは過去の記憶。ふたりの記憶の中で食い違う、お互いの活発な姿。己の記憶も曖昧なほどの幼い頃の性格は、どちらが正しいのか。お互いに求め合う、虚構かもしれない性格だ。

正解は物語の終盤で明かされるが、そこに至るまでの両者の関係性なんかを丁寧に書いている。

幼馴染のかつての姿をVtuberという今の虚構に重ねる構成が見事。引っ込み思案な那奈と、彼女の中にあるVtuberのなずなの性質はどちらが本物なのか。その答えを読ませる文章で探る物語で、楽しめた。
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