イチオシレビュー一覧

『あなたの側にいられないなら、誰もいらないもの。あなたを失うより重たい後悔なんてないわ。』
そんな愛の言葉を紡ぐ彼女は鼻歌を口ずさみながら崩れた魔法を編み直す。その目は仄かに光を放ちスミレ色に変わる。

でも、これは、最愛の人の隣に立てたからこそ。
お互い強い魔力を持ちながら、その特性に振り回されてきた。
その長い道のりの、酸っぱくて苦くてちょっと甘い人間模様を堪能してほしい。

外側だけ見ると、よくある王子様とお姫様のお話。
お膳立てが整っているのは小説の必然な訳ですが、
よくできたお話には必携である、登場人物達の

・行動の動機付け
・キャラの有り様のブレなさ
・発言(掛け合い)

が丁寧に整えられています。端役も含めて。

全体のシナリオ進行も、
優れた取捨選択と描写に支えられた良テンポです。
端折られてますが王子様も相当苦労してるっぽ。

そして、この手の話で大事なのがヘイト要素。
詳細はお腹痛くなるので省きますが
ブレることなく主人公達を苛んでくれます。
ただの舞台装置ではなく、
闇ポイントに必然と共感要素を織り込んである所が◎。

総じて、丁寧に紡ぎあげられた
緻密で滑らかに刺繍されたブランケットの様です。
そんなブランケットに包まれながら、
主人公達のハラハラウットリを共有していただけたら。
そう思います。


あ、もひもひ君もいいですね。もひもひ。