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世界との接続がゆっくり切れてゆく病

  • 投稿者: 髙津 央   [2020年 12月 31日 20時 44分]
静かな筆致で描かれる閉じゆく世界。
本作で描かれるのは、世界との接続がゆっくり切れてゆく病。

ヒトは五感を通して、世界と、誰かとつながる。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚……
見慣れた風景、心地よい声、懐かしい匂い、手料理の味、誰かと触れ合うぬくもり。

ノイズを拒絶するあまり、次第に世界から切り離されてゆく。
意欲と感性、意思疎通……感覚の前に色々な物を失ったと自覚できない。

ヒトは、終わりの時を迎えるまでに何を成し、何を残せるだろう。
残せない者の存在は、不要なのか。

命の価値を決めるのは誰か。

治癒する患者と、終わりを迎える患者の違いとは何か、考えさせられる短編。
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