イチオシレビュー一覧
▽レビューを書く 派手な華麗さではないかもしれません。
でも、しっとりと沁み込んで来て、いつしか心を満たしていくような美しさ。
そんな美を感じる作品です。
舞台は夜。
陰陽師の力を和歌によって扱う主人公が活躍する物語です。
月光の下、邪悪なるものを滅する陰陽歌人である羽田未央。
彼女には極めて優れた才能があるのですが、そこには何か秘密があるようで……。
九藤先生の作品は、とかく美しい文章に目が行きがちです。
しかし、謎の多い物語や、多彩な登場人物達も本作の魅力であります。
「黄昏時に気を付けておあげ」
作中の或る老女の発したこの台詞は、果たして何を意味するのか。
「達磨切り」を扱う陰陽歌人、九百合。
『鬼使いの朱鷺耶』。
彼らの動向からも目が離せません。
九藤先生の真骨頂とも言える和風幻想奇譚。
是非お勧めの一作です。
でも、しっとりと沁み込んで来て、いつしか心を満たしていくような美しさ。
そんな美を感じる作品です。
舞台は夜。
陰陽師の力を和歌によって扱う主人公が活躍する物語です。
月光の下、邪悪なるものを滅する陰陽歌人である羽田未央。
彼女には極めて優れた才能があるのですが、そこには何か秘密があるようで……。
九藤先生の作品は、とかく美しい文章に目が行きがちです。
しかし、謎の多い物語や、多彩な登場人物達も本作の魅力であります。
「黄昏時に気を付けておあげ」
作中の或る老女の発したこの台詞は、果たして何を意味するのか。
「達磨切り」を扱う陰陽歌人、九百合。
『鬼使いの朱鷺耶』。
彼らの動向からも目が離せません。
九藤先生の真骨頂とも言える和風幻想奇譚。
是非お勧めの一作です。
夜が妖艶で恐ろしいのは何故だろう。
時に月は、あやかしを呼び寄せる。
啜り泣く哀しみの旋律は、彼女だけに聴こえる「助けて」は精一杯のさけび。
死人に口なし、と、この世ではそう言う。
悔いは憎しみとなり彷徨い続ける霊はやがて牙を剥く……。
そうした魂だけの存在を救うことが彼らの使命。
今宵も月明かりの下で彼らは人助けをする。
時に月は、あやかしを呼び寄せる。
啜り泣く哀しみの旋律は、彼女だけに聴こえる「助けて」は精一杯のさけび。
死人に口なし、と、この世ではそう言う。
悔いは憎しみとなり彷徨い続ける霊はやがて牙を剥く……。
そうした魂だけの存在を救うことが彼らの使命。
今宵も月明かりの下で彼らは人助けをする。
「美しい」を感じたいあなたへ。
- 投稿者: 退会済み [2020年 12月 12日 01時 53分 (改)]
管理
本作は、陰陽道をベースにしたとある二人の物語になっている。
文章についてはすばらしい。
作者の愛が全てに備わっていて、一つ一つのセンテンスでこちらのイメージを最大限掻き立てる事を重視していると私は思う。故に、読めばすぐにすっと、世界に入る。
九藤さんが書いた、摩訶不思議な陰陽道の世界に溶けいる事が出来る。
その中身としては、陰陽道をベースにした素晴らしい物語。勿論要所要所に陰陽道の話が入っている。そこに九藤さんがオリジナルでアレンジした設定がつぎ込まれている。
陰陽道が織りなす結果と奇跡は、声をそろえて美しいと言わざるをえないだろう。
文章についてはすばらしい。
作者の愛が全てに備わっていて、一つ一つのセンテンスでこちらのイメージを最大限掻き立てる事を重視していると私は思う。故に、読めばすぐにすっと、世界に入る。
九藤さんが書いた、摩訶不思議な陰陽道の世界に溶けいる事が出来る。
その中身としては、陰陽道をベースにした素晴らしい物語。勿論要所要所に陰陽道の話が入っている。そこに九藤さんがオリジナルでアレンジした設定がつぎ込まれている。
陰陽道が織りなす結果と奇跡は、声をそろえて美しいと言わざるをえないだろう。
秘められたポテンシャルの高さを感じる。
- 投稿者: 妹小路ヘルヴェティカ [2020年 10月 28日 13時 11分]
12/12まで読了。
正直、お話的には序盤なのかもしれないですが、根本設定部分のアイディアが秀逸ですね。
特に「歌(詠)」の扱いが独特で、目を見張ります。
陰陽歌人というからには、古の和歌を扱うのかと思いきや、啄木なんかも出してくる。
作者さんの発想力に舌を巻いてしまいます。
九藤さんの作品は以前も拝見したことがあるのですが、人間観というか、人と人の描き方にも独特の世界があって、「これは自分には書けないわ」とうなってしまいます。
耽美な危うさ、とでも言うべきなのでしょうか?
僕の乏しい語彙では説明しきれないので、とりあえず読んでくださいw
万人向けとはいい難いかもしれないですが、ハマる人にはドップリとハマれる、そういう(良い意味で)噛みごたえのある重厚感のテキストです。
正直、お話的には序盤なのかもしれないですが、根本設定部分のアイディアが秀逸ですね。
特に「歌(詠)」の扱いが独特で、目を見張ります。
陰陽歌人というからには、古の和歌を扱うのかと思いきや、啄木なんかも出してくる。
作者さんの発想力に舌を巻いてしまいます。
九藤さんの作品は以前も拝見したことがあるのですが、人間観というか、人と人の描き方にも独特の世界があって、「これは自分には書けないわ」とうなってしまいます。
耽美な危うさ、とでも言うべきなのでしょうか?
僕の乏しい語彙では説明しきれないので、とりあえず読んでくださいw
万人向けとはいい難いかもしれないですが、ハマる人にはドップリとハマれる、そういう(良い意味で)噛みごたえのある重厚感のテキストです。
矢は、弓に張られる弦で翔ぶ。
物語の登場人物である、羽田未央と昌太郎を弓と矢に例えた。
矢は、羽田未央。昌太郎は、弓。
的である、世から外れたかつての生を射る描写に、読み手は心が踊ったことだろう。
陰陽に和歌を付ける。送り出す魂に恐れを抱かせない“詠み”に心地好さを覚えた。
本作品の魅力は、これで尽きない。
和の美しさを、極めた文章が堪らない。食通なら喉を鳴らす、食の描写。伝統工芸品も情景の一部となって、かたちを触っている感覚がする。人物像の表現に於いても服装が決め細やかに描写されており、物語に魅了されていくのであった。
陰があるから、陽は眩しく照る。
陰も美のひとつ。
陰の美しさが散りばめられている、お奨めの作品です。
物語の登場人物である、羽田未央と昌太郎を弓と矢に例えた。
矢は、羽田未央。昌太郎は、弓。
的である、世から外れたかつての生を射る描写に、読み手は心が踊ったことだろう。
陰陽に和歌を付ける。送り出す魂に恐れを抱かせない“詠み”に心地好さを覚えた。
本作品の魅力は、これで尽きない。
和の美しさを、極めた文章が堪らない。食通なら喉を鳴らす、食の描写。伝統工芸品も情景の一部となって、かたちを触っている感覚がする。人物像の表現に於いても服装が決め細やかに描写されており、物語に魅了されていくのであった。
陰があるから、陽は眩しく照る。
陰も美のひとつ。
陰の美しさが散りばめられている、お奨めの作品です。
古より、人の道と何らかの道は交わりを続けてきた。それが顕著になる頃合いを、人は「誰そ彼刻」と名付けたのだったか。
ページを捲るごとにはっとさせられるのは、文字を追っているうちに「間」の領域に跳びそうになっている心で──美しき綴りながらも切迫してくるものの優美さと迫力に、未央という人のなんたるかを知らされる。
例えばセーマンドーマン、史実とはかけ離れれど趣ある物語として記される二者の得手が、今は命の護りとして並んで刺繍されているように──この物語でも様々な歌人の在り方が、ある種独立し、ある種重なり合って描かれている。その多様さと各々の放つ個性に、世界の在り方すら考えさせられる気がしなくもない。
未央たちの時代をも、いつか歴史は歌い出すだろうか──律され研ぎ清まされた力と「言」と、やわらかで独特な「歌」たちの織り成す、動の中の静であった時代があったのだと。
「今」の甘美さを継ぎつつ──。
ページを捲るごとにはっとさせられるのは、文字を追っているうちに「間」の領域に跳びそうになっている心で──美しき綴りながらも切迫してくるものの優美さと迫力に、未央という人のなんたるかを知らされる。
例えばセーマンドーマン、史実とはかけ離れれど趣ある物語として記される二者の得手が、今は命の護りとして並んで刺繍されているように──この物語でも様々な歌人の在り方が、ある種独立し、ある種重なり合って描かれている。その多様さと各々の放つ個性に、世界の在り方すら考えさせられる気がしなくもない。
未央たちの時代をも、いつか歴史は歌い出すだろうか──律され研ぎ清まされた力と「言」と、やわらかで独特な「歌」たちの織り成す、動の中の静であった時代があったのだと。
「今」の甘美さを継ぎつつ──。
陰陽師の術と、邪霊を払う詩を歌う、二人一組の仕事人の物語です。
- 投稿者: 退会済み [2020年 10月 02日 18時 28分 (改)]
管理
本作では、作者様のいつも通りの美しい和風の風情が感じられるのと同時に、
スピリチュアルをテーマに触れられています。
陰陽師の呪術と和歌の詩で、邪霊を払う主人公の未央からは、
言葉では表現しつくせない妖艶さと、
自分を強く律するシビアな厳しさ、
人に対しての深い優しさを感じさせます。
未央の仕事に連れ添う昌太郎は、
紳士的なスマートさと、気品と、未央を心配する優しさを伺えます。
目に見えない霊的なモノを表現するのは、
とても難しいテーマなのですが、
繊細な表現と、現実味を帯びた描写で、見事に描かれています。
作者様のお気に入りを巧みに詰め込んだ、とても素晴らしい作品です。
「ぜひ、皆様にご覧になって頂きたい秀作です」
スピリチュアルをテーマに触れられています。
陰陽師の呪術と和歌の詩で、邪霊を払う主人公の未央からは、
言葉では表現しつくせない妖艶さと、
自分を強く律するシビアな厳しさ、
人に対しての深い優しさを感じさせます。
未央の仕事に連れ添う昌太郎は、
紳士的なスマートさと、気品と、未央を心配する優しさを伺えます。
目に見えない霊的なモノを表現するのは、
とても難しいテーマなのですが、
繊細な表現と、現実味を帯びた描写で、見事に描かれています。
作者様のお気に入りを巧みに詰め込んだ、とても素晴らしい作品です。
「ぜひ、皆様にご覧になって頂きたい秀作です」
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