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笑いとリアリティ溢れるとある作家の物語

  • 投稿者: 足軽三郎   [2021年 01月 30日 21時 41分]
 いい意味で為になる娯楽を極めている、と断言したい。
 主人公が獣耳金髪巨乳吸血鬼ロリババアカレー好き少女というどこまで設定を盛ったのか、という点は好みが分かれるけれど、それはさておき。
 この小説の面白い点は、主人公が売れないなろう作家という設定である。
 枯渇する財布に怯え、主人公は自らの作品を自分で電子書籍化して売ろうと試みるのだ。

 涙ぐましい努力で校正を繰り返し。
 なろう作家を取り巻く赤裸々で生々しい事情を剥き出しにしながら。
 売れなかったらどうしようという恐怖に怯えつつ、電子書籍の売上げを注視して。

 作者ご自身が書籍化した経験を活かし、リアリティに満ちた筆致で描く。
 そうだ、これこそが――読者の胸に迫るエンターテインメントだ。
 テンポ良し、笑い良し、題材良しのさらりとした現代ものとしてお勧めします。
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