イチオシレビュー一覧

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薬の売人二人組が、通常のルート営業に出ていたはずなのに、暗殺の現場に巻き込まれ、組織に売られたことを悟る

・もう遅い
「悲しい事件だ」
 そう、セヴェリは言った。
「ああ、確かに。こんなに悲しいことはないな」
「何せ人が死んでるから」
「しかも二人も」
「それじゃあ、僕達はなんでここでこうして生きてるんだ?」
「生贄だろうな」

・もう遅いのか?
ハリウッド映画のようなアクションサスペンス。モノトーンな雨の街。
絶望的な状況の中、二人は逃げ惑いながら生き延びる道を模索する。

・もう遅い
更に状況は積み重なる。
人質として確保したはずの公爵令嬢に、逆に病身の妹を人質に取られ脅迫される。
自分の手駒となれ、と。

・今更遅い
しかしここは地球ではなく、魔術の存在する異世界。
セヴェリは幻惑・隠蔽しかできない、攻撃力皆無の水属性魔術師。カロージェロは次元大介のような頼れる相棒、雷魔術をEV車の動力源にしてかっ飛ばす運転の名手。

・今更遅い?

題名詐欺?の美しい物語

  • 投稿者: osaosamu   [2020年 12月 19日 19時 15分]
チートに近い幻惑能力を持ちながら病気の妹を抱え恩義やしがらみで雁字搦めになり運にも恵まれず堕ちていく主人公。後ろ暗い仕事に手を出しついには大きな陰謀に巻き込まれてしまう…と何とも暗澹たる出だしですが、頼りになる相棒と貴族としての正しい矜持を貫こうとする聖女様と共に足掻きながら乗り越えていきます。
もう遅いのか、いつから間に合わなくなったのか、本当に遅いのか…何度も繰り返されるテーマ。
希望の先にある絶望、漂う閉塞感が小さな工夫やトリックの積み重ねで打開されていくという何とも綺麗なお話です。
あと雷魔法で操る魔力依存動力四輪車がとても格好良い事もぜひ言っておきたい。

なげやりなあらすじに惑わされますが、騙されたと思って読んでみて欲しい。
応援できる主人公たちです。



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