イチオシレビュー一覧

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私はいつも幸せに過ごしていました

 あなたはもう覚えていらっしゃらないでしょう。

 殿方というのは弱々しいものですね。涙ひとつ流さないことが強さとでも思っていらっしゃるのかしら。
 だから愛した女の顔も忘れるのですよ。無骨にも程がありますね。

 あの方をご覧なさい。
 けして娘とは言えない歳です。
 後継を産めず離縁されたとのことです。

 同情しましたか。憐れみましたか。病に伏せる娘を看取る気分になりますか。余計なお世話でございます。

 春の香りを感じたら馬に乗って行きなさい。あの方はあなたなどよりずっと先に進んでいます。
 老いてから恋などできないと。随分臆病ですこと。

 悲しみにも目を向けてください。憎しみを愛してください。
 不幸や苦しみは一人胸に仕舞うものだけど共に背負っていけるならきっと不幸すら良かったと思えるでしょう。

 あなたの花が芽吹き彼女の希望がこの国を包むまで私は皆さんを見守り続けますから。
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