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優しくて、暖かくて、そして、ちょっと寂しい最後。そんな物語をまだまだ寒い今の時期にいかがでしょうか。

  • 投稿者: 水渕成分   [2021年 02月 18日 21時 51分]
「小説家になろう 冬の童話祭2021」及び銘尾友朗様の「冬の煌めき企画」参加作品です。

1400字ジャストで、ジャンルはもちろん童話です。

物語は童話にふさわしい優しい感じの文章が第三者視点で語られます。

ヴツブルクの森番小屋は、石造りの立派な家。しかも魔法の力で守られていて、夏の暑さも、冬の寒さもここにいればへっちゃら。

でも、誰も森番を見たことがない。不思議な家。冬になると誰も手入れをしなくても、自然に暖炉に火が点き、しかも、この暖炉は歌を歌ってくれます。

そこにある日、小さな女の子が訪ねてきて……

ここから先は実際に読んでお確かめください。

優しくて、暖かくて、そして、ちょっと寂しい最後。そんな物語をまだまだ寒い今の時期にいかがでしょうか。

この歌う暖炉がある森小屋を見つけたあなたへ

 古の蜘蛛たちが遺した巣がキラキラふんわり守るヴツブルクの森。
 人々の祝福記した石碑は今や礫になり川の枕と成り果てました。

 この森の奥にある番小屋で、今も芝は弾け薪が心地よい音を立て甘くにがい香りと共に暖炉の炎は燃えています。
 煙が目に染みることはあり得ません。炎はあなたの瞼を重くしてくれます。

 人の記憶にも神の記録にも儚くなった今も暖炉さんは歌います。
 忘れた母の歌。古の英雄の歌。滅びた村や町の祭り歌。
 ひょっとしたら最近のVtuberやヴォーカロイドも教えれば歌ってくれるかもしれません。

 ちょっと休んでもいいでしょう。急ぎの旅ですか。
 1400を数えて眠りにつくくらい許されるでしょう。

 あなたの来訪をずっとずっと前から待っていました。
 凍える身体を癒し震える心を温めて、旅に出ましょう。

 あるいはずっとここにいるのもいいかもしれません。
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