イチオシレビュー一覧

この物語は、辰巳センセイが母校の中学校で、教育実習生をしていた３週間に起きた事件の話。

日付は、２０１１年１０月３日(月)から。

女子中学生たちの中にあるスクールカースト。
そして、奇妙な、万引きの自白。
謎を紐解く辰巳センセイが知った事。

授業は、「銀河鉄道の夜」。

――『もう駄目です。落ちてから四十五分たちましたから。』

主人公のジョバンニは、残された人。
逝ってしまったカムパネルラ。

残されたジョバンニたちは、物語の後も生き続ける。
その心の内を隠して。


東日本大震災から、今日で１０年と２ヶ月。

節目のひとつとなる今日の日付で発売された書籍版には収録されていないエピローグです。
書籍の前でも後でも、過不足なく読めます。

読みたいと思った時が、その物語との出会いの時。

さあ、出会いましょう。

2021年春、「辰巳センセイの文学教室」は書籍化されます。その主人公の辰巳センセイがいかにして教師になったのか、本編よりちょっと前のお話。

作者の描く物語は、緻密なプロットの軸に巧みな文章表現で読む者をグイっと引き込みます。綴られる文章から溢れる香りや空気感はまさに本物。素晴らしいのです。

そして、肝心の中身です。当然隙なし！ぎっしりと、老舗のたい焼きのように中身が詰まってます。
辰巳センセイ全編を通して、ヒトはみんな完全ではないんだということが物語のベースにあるように思います。ヒトとして、抱えているものにどうやって向き合っていくのか、その向き合い方をずっと問いています。それは生き方であり、生き様です。完全じゃなくて、どこか壊れていたり、欠けていたり、間違っていたり。そことどう向き合うか。辰巳センセイ自身も含めて。

読めば心動かされる事は間違いなしです！！
是非ともご一読を！！

国語科の教育実習生・辰巳先生が実習先の中学校で出会ったのは、他の子とはどこか異なる雰囲気を持つ美少女と、不思議な万引き事件、そして、イジメ未満ではあるけれど、なかなかややこしいクラスの問題。

それらのテーマが　『銀河鉄道の夜』　の解説を織り込みながら、徐々に解きほぐされていきます。
それぞれに悩みを抱えた少女たちは果たして、そこから何を見出し、どう進んでいくのか……。

重いテーマのように見えますが、作品自体は、リアルな中学生の描写と次第に解き明かされていく謎の兼ね合いが面白く、すいすい読み進められます。

第8回ネット小説大賞を受賞した　『辰巳センセイの文学教室』　の前日譚にあたる物語。本編を読んでいなくても楽しめますが、読んでいるとより味わい深いです。どちらもオススメです。