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この物語の最後、夢幻の世界で心癒された主人公はそれにとらわれず、前を向きます。そんな少年の成長劇。あなたも読んでみませんか?

  • 投稿者: 水渕成分   [2021年 03月 18日 22時 41分]
家紋武範様主宰の「夢幻企画」参加作品です。

6321字の童話。桜の花咲く春の光景がふんだんに盛り込まれており、とても読みやすい文章です。

主人公は十歳の少年「こうちゃん」こと孝君。彼は五年前母を亡くし、父と姉と暮らしています。

姉に残されたのは母の持っていた古今ひなの雛人形。但し、主役の女びなは母の棺に納められてありません。

母が残していった雛人形についての姉の複雑な感情。それをぶつけられる孝君のやりきれない寂しさ。

そんな彼が春風に舞う桜吹雪に包まれてたどり着いた場所は……

ここから先は実際に読んでお確かめください。

この物語の最後、夢幻の世界で心癒された孝君はそれにとらわれず、前を向きます。そんな少年の成長劇。あなたも読んでみませんか?

死が分かつとも、母の愛は海よりも深く…

女雛が欠けてしまった雛人形。
それは沙織と孝の姉弟にとって、母の思い出の品であると同時に、母との死別を直視させられる物でもありました。
雛人形を飾るか否かで逡巡する沙織と、そんな姉に突っかかる孝。
姉弟間の諍いの根底にあるのが、母を慕う子の想いであるだけに、切なさが胸に沁みます。
そうして姉との仲を拗らせた孝が桜並木を歩く時、起きる奇跡とは…
母を慕う子の想いと我が子を案じる母の親心を描いた、涙なしには読めない感動作です。
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