イチオシレビュー一覧

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ただの“男の哀切”を描いただけの物語……じゃない。この発想は出てこない!


 難しいテーマ(反出生主義)をサラリとコミカルに描いていて凄いなぁ、と感心しながら読み進めていると話が急転直下。
 突然、家族を巡る男の哀切が描かれます。
 そして、その先に待っていたものは……

 たった三千文字の物語。
 だけどその短い読書時間の中で、心の内に様々な感情が浮かんでは消えていく……。
 
 短編小説のお手本のような作品だと思いました。
 思わずクスリとさせられる、笑いを誘う軽い筆致も美点です。

 綺麗に整った話の構成、切れのよいオチを求める読者さまに是非おすすめです!

直感に対して挑戦状を出された

未来から来た娘。物質としての彼女を追跡出来ていたら、これはパラドックスではない。
最後の一文が、この話をパラドックスにする。読み手には、主人公の視点で、決まった時間の幅しか、与えられていないから、この話はパラドックスになっている。
↑が挑戦状の正体だと思う。

読者の直感に挑戦するだけでなく、感情も誘うと思う。「親説得のパラドックス」そのものに、切ない、と思わせるものがあった。
さらに、最後の流れが、切なさを盛っていると思う。この流れは、現代の多くの人に、切なさを呼ぶのではと思う。テレビのニュース自体が空虚なものなのかもしれない。空虚なものから出る響きは、空虚なものだ。

本編では、淡々と流されていたが、結婚相手が、子供ができないからといって離婚を迫ってくるのも、切ない。
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