イチオシレビュー一覧

『今日で魔王辞める！』はファンタジー色が強い作品である。が、ひとつ注意しなければならない事柄がある。私はさきほどこの掌編をファンタジー、と形容したが、ジャンルとしてはファンタジーではない。作者曰く「コメディー」なのだ。読者を笑わせることを目的としている小説なのだ。
といっても手抜きの三文芝居ではないし、力任せに描写しているわけでもない。精細な要素がスケッチされている。実にすばらしい形容や叙述が多い。オチも確乎たる終着点を構築しており、コメディーであることこそが今作品の称賛すべき事項なのである。
エンタは続く。そう！ 付随する関連小品集＝シリーズ「今日で○○辞める！」を読むことで、今作品の世界観が萌芽し、更なる魅力を見出せるのだ！ 一度読んでみてはいかがだろうか？
これらの連続創作物はまるでタイムマシンに乗るかのように私たちを楽しませる。莞爾と笑わざるをえない耽美な物語たち――なんて幸せか。