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凡庸な精神における血の流し方

 どことなく昭和純文学を連想させる文体で、混じりけのない赤裸々な主人公の苦闘が綴られていく。鏡を眺めているようで画面を眺めているような、そんな奇妙な感覚を味わいながら読んだ。
 本作はまた、『凡庸』という言葉の解釈についても考えさせられる。『凡庸』と『愚鈍』は違う。ただし、なにかの弾みで容易に癒着する。そうならないですむには当人の自覚も必要なら運も必要だろう。主人公はその二つを……いささか覚束ないながらも……備えていたからこそ、明日への展望を得られたといえよう。
 必読本作。

マニュアルみたいな小説

  • 投稿者: 退会済み   [2021年 04月 11日 20時 11分]
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 シクラメンさんがツイートでよく流すことを物語にしたって感じがしました。書籍化作家のお告げなのでよく聞いておいた方がいいと思います。
 主人公は自己顕示欲の塊みたいな人間です。いかんせん親のために生きてきたしとうとう認められなかったし。劣等感に苛まれるのも仕方がないのかもしれません。その結果彼は自分を認めてもらうための手段として物書きの道を選んだのですが、物語の結論として彼が至ったのは……読めばわかります。
 私も一応物書きを名乗っているので、ところどころ思うところや同情するところがありました。「自分が無能だから小説家になるー」って言う人、結構いるのかな? 
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